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共和国の経済戦略(中)計画経済

国家の統一指導が原則/人民経済計画法に沿って


社会主義的所有に

 今年4月7〜9日に開かれた最高人民会議第10期第2回会議では、人民経済計画法が採択され、注目をあびた。
 採択の目的をひとことで言えば、共和国が計画経済を堅持していくことを改めて明らかにするものであったと言える。同法第1章も、「共和国の経済は、生産手段に対する社会主義的所有に基づいている計画経済である」(第2条)と規定している。同法の採択について報告した最高人民会議常任委員会の楊亨燮副委員長は、「党は経済の計画的管理でいかなる分権化や自由化も許さず、今後も国家の中央集権的・統一指導的原則を守っていく」と強調した。

 共和国では昨秋すでに、資本主義市場経済には進まないとの立場を改めて明らかにしている。

 昨年9月17日に朝鮮労働党機関紙の労働新聞と党理論誌の「勤労者」が発表した共同論説「自立的民族経済建設路線を最後まで堅持しよう」がそれだ。

 米国主導による世界経済の一体化(グローバル化)を批判したこの論説は、「外資はアヘンのようなもの」、「『改革』、『開放』へと誘導しようとする策動に警戒心を高めなければならない」、「『改革』、『開放』は砂糖をぬった毒薬」などと「改革・開放」を批判し、絶対に受け入れないとの立場を改めて明らかにした。

 

北への制裁解除が先決

 昨年9月の最高人民会議第10期第1回会議の参加者らは、1990年5月24日の第9期第1回会議で金日成主席が行った施政演説「わが国の社会主義の優位性をさらに高く発揮させよう」の録音を聴取した。

 「共和国政府が引き続き堅持していかなければならない国家政策」(民主朝鮮98年10月17日)とされる同演説のテーマは社会主義制度をいかに守っていくか。経済的には自立的民族経済路線の堅持である。

 そして、今年6月1日に労働新聞と「勤労者」が発表した共同論説は、「経済分野では、カネで人を動かす資本主義的企業管理の方法と帝国主義に門戸を開ける『改革』、『開放』に少しの幻想も抱いてはならない」と指摘した。

 だが一方で、昨年9月の労働新聞と「勤労者」の共同論説は、「わが国は門戸を『閉鎖』した覚えはない。われわれにはいまさら『改革』するものも『開放』するものもない」と指摘した。

 主席は94年4月16日、世界各国の元国家・政府首班、政治家平壌訪問団メンバーに対し、「他国の人々が思いどおりにわが国に入り、経済活動を行うようにすることが開放」としながら、「開放も朝鮮式に行っている」と語っている。

 だが共和国が開放しても、米国などが制裁措置をとっている限り、外国企業が望んでも共和国に進出できない。むしろ、長期にわたって経済封鎖という形で閉鎖されてきたのは共和国の方で、まず解決されるべきは共和国に対する制裁問題だと言える。

 つまり、資本主義体制の移行へと誘導する「改革・開放」は受け入れないが、朝鮮式にはいつでも門戸を開いているというわけだ。

 

資本主義との交易も

 こうした脈絡から共和国では、部分的には資本主義市場とのつきあいをしていくようだ。

 金正日総書記は昨年10月、慈江道内にある鴨緑江タイヤ工場を訪れた際、社会主義市場がなくなり周辺諸国が資本主義貿易を行っている条件に沿って、企業所管理は社会主義の原則に基づきながらも貿易は資本主義諸国を相手にしなければならないと述べた。

 これは、主席が92年12月14日の共和国中央人民委・政務院連合会議で、「…われわれは社会主義市場を基本対象にしてきた貿易政策を資本主義市場を対象にする貿易政策に転換させなければならない」と語ったことと一脈通じるものがある。

 昨年9月の最高人民会議第10期第1回会議で修正・補充された社会主義憲法にも、経済部分でいくつかの変更が見られる。

 「自留地などの個人副業経営による生産物と、その他の合法的な経営活動を通じて得た収入も個人所有に属する」(24条3項)、「…対外貿易は、国家または社会協同団体が行う」(36条1項)、「国家は…特殊経済地帯での各種企業の創設・運営を奨励する」(37条)などだ。

 原則は社会主義計画経済に基づく自立的民族経済路線だが、取り巻く環境の変化に合わせて柔軟に対応していこうとしていることが読みとれる。(聖)