ここが知りたいQ&A/南の「ゼネスト誘導事件」とは
検察・企業が共謀し裏工作/労組、市民団体が大規模闘争へ
Q 南朝鮮で8日に発覚した「ゼネスト誘導事件」が大きな波紋を呼んでいるが。
A 一方的な構造調整に抗議する労働組合のゼネストを弾圧するため、検察と企業が共謀してゼネストを行うよう裏工作をしていたものだ。労組のみならず、市民の間でも「明らかな労働者弾圧」と非難が広まっている。世論の関心は今や金大中「政権」の閣僚、検察総長、財閥会長の夫人らが脱税容疑の掛かった財閥会長の捜査をめぐって贈収賄をした「ミンクコート事件」から移りつつある。
Q 事件発生から発覚までの経緯は。
A 発端は最高検公安部長だった秦炯九が漏らした一言だ。彼は7日、忠清南道大田高検検事長への昇進内定を祝う昼食会の席上、ウイスキーをビールで割った「爆弾酒」を一気に3杯空けた。1杯でも強烈なこの「爆弾酒」の勢いで、事務室を訪ねた検察番記者らに対し、造幣所の統廃合に抗議する「韓国造幣公社」労組のゼネストが「社長と共謀して意図的に行わせたもので事実上、自分たちが仕組んだものだった」としゃべってしまった。この事実は翌日、当の記者らを通じて表面化し「酔った勢いの失言」との釈明も通じず現職を解任、昇進内定も取り消された。法務部長官の金泰政も「監督不行届」を理由に更迭された。金大中「政権」としては「ミンクコート事件」の記憶も覚めやらぬうちの不祥事だけにすぐさま「国政調査」を約束するなど、事態の早期収拾に躍起だ。
Q ゼネストを仕組んだ意図は何か。
A 造幣所の統廃合を早めたい思惑がある。造幣公社の当初の計画では、忠清北道の沃川造幣所を2001年までに隣の慶尚北道にある慶山造幣所に移転することになっていた。これを1999年2月に前倒ししたい検察と企業側は、労組にゼネストをさせて「不法行為」のレッテルを貼れば、弾圧の口実になるうえに前倒しも正当化でき、なおかつ「構造調整に反対するゼネストは徹底弾圧する」という他労組への見せしめにもなると考えた。こうして同社は計画の前倒しを労組に通達し、さらには沃川造幣所を強制閉鎖して反発をあおった。一方的な構造調整への対抗措置を取らざるを得ない労組がゼネストに入ると、同社は労組幹部を検察に告発、検察も「不法行為」として弾圧した。検察と企業側の思惑通りに事は運んだが、移転は結局、準備不足で頓挫した。
Q これに対し労組など各界の反応は。
A 「一方的な構造調整に対する労働者の抵抗をつぶす公安の陰謀を当事者が暴露した」と怒り心頭だ。被害者の造幣公社労組は、事件の真相解明と社長の解任、統廃合計画の白紙撤回を求めてハンストに突入。全国民主労働組合総連盟と「韓国労働組合総連盟」は現在もろう城を継続中で、大規模な反「政府」連帯闘争も模索している。さらに、12日には経済正義実践市民連合や参与民主社会市民連帯などが「造幣公社構造調整真相調査委員会」を結成するなど、市民団体も抗議の声を強めている。一方、同社以外にも検察が裏工作をした疑いが強いとして、現代自動車、万都機械、ソウル地下鉄公社など複数の企業の名前が挙がっており、労働界では当局にこれらの調査も徹底して行うよう訴えている。