倒産の三星自動車/釜山工場引き揚げに市民反発
「金大中『政権』は釜山経済をつぶす気か」――。先月末に倒産した南朝鮮・三星自動車の処理方法をめぐり、釜山市民の怒りが頂点に達している。第三者への売却方針を固めた当局と三星グループに対し、地元での自力再建を願う市民が抗議行動に出たのだ。自動車産業が基幹産業の釜山にとって、三星自動車の引き揚げは死活問題。長引く不況も絡み、事態は長期化の様相を呈している。
三星グループが自動車業界に進出したのは1995年3月。当時、現代や起亜、大宇などが凌ぎを削る自動車市場は供給過剰状態にあり、三星の参入には各社とも「供給過剰が深刻化し、業界共倒れの恐れがある」と反対したが、三星は半ば強引に三星自動車を立ち上げ、多額の資金を借り入れて投資を続けた。
だが、周囲の予想どおり、供給過剰と販売鈍化で需要と供給のバランスは崩れ、昨年7月には無理な投資がたたって資金繰りが悪化した起亜自動車が倒産した。通貨・金融危機を招き、国際通貨基金(IMF)の融資をあおぐ直接的な引き金となった。
三星自動車も案の定、売り上げが伸び悩み、月4000台水準だった乗用車販売は10分の1以下に落ち込んだ。昨年12月に大宇電子との事業交換を発表後、釜山工場の稼働もストップ。先月30日、釜山地裁に法定管理(日本の会社更生法)を申請するに至った。負債総額は約4兆3000億ウォン(約4300億円)にも上る。
事業交換計画はこれで白紙に戻ったが、収まらないのは釜山市民だ。自動車工場の稼働停止で下請企業が打撃を被り、中小企業の操業率は5月末現在で64.5%まで落ち込んだ。同月末現在の釜山の失業率は9.6%。全体の失業率が6.5%なので、実に3ポイント以上も上回る。長引く不況と相乗して、市民生活は圧迫されている。
そこへ、当局と財閥側から突然、発表された工場移転計画が追い討ちを掛け、「地域経済の立て直しを阻む一方的な措置」との批判が爆発。60の市民団体からなる「釜山経済立て直し市民連帯」は7日の「金大中『政権』糾弾大会・三星製品不買100万人署名運動突入式」で、反「政府」闘争への突入を宣言し、売却計画の撤回と下請業者への補償を訴えた。不買運動は現在も続行中だ。
自動車業界の再編は金大中「政権」の財閥改革の柱だっただけに、三星と大宇の事業交換の白紙化は大きな痛手となった。現代電子によるLG半導体の吸収合併など、これから進んでいく改革も、今回の失敗で実現は不透明になった。
来年4月の総選挙に向けて与野ともに態勢固めに取り掛かっている最中、与党側が財閥改革という、連立「政権」発足時からの至上命題でつまづいたことは、野党に格好の批判材料を与えた。ハンナラ党はさっそく「経済失政だ」として徹底追及の構えを見せている。(根)