大阪朝高、強豪帝京にPK戦で惜しくも破れる/インターハイサッカー
岩手県で行われている全国高等学校総合体育大会(インターハイ)のサッカー競技に、朝高団体競技チームとして初めて出場した大阪朝高サッカー部。3日、在日同胞の期待を一身に背負い帝京(東京都代表)と対戦。前後半を終えて2―2の同点となりPK戦の末、惜しくも破れた。勝利は逸したものの、日本の高校サッカー界に君臨する強豪と互角に渡り合う大健闘ぶり。頂点を目指す新たな挑戦の歴史に、力強い1歩を刻んだ。
大阪朝高 | 2―2 | 帝京高校 |
1―2 1―0 |
||
10 | FK | 23 |
6 | CK | 3 |
20 | シュート | 9 |
終了間際に同点ゴール
会場となった雫石町営陸上競技場には、大阪や岩手のほか、遠くは愛媛など日本各地から600人近い同胞らが詰めかけた。
大阪朝高は大声援を背に、立ち上がりから8番梁勇基(3年)を軸にして、4人のMFが中盤を支配、左右から帝京ゴールを攻めに攻めた。
しかし、帝京DF陣の堅守もあり、再三の決定機を逃す。12分には、一瞬のスキに相手FWの突破を許し失点。31分には、MF姜星一(3年)への反則で得たPKを梁が決めて同点とするが、直後に再び失点し、前半を1―2で折り返した。
後半には、エンジンのかかった帝京の攻撃をDFが良くしのぎつつ、前線でも攻め手を強めるが、なかなか得点には至らない。終了2分前には、GK康徳昊(3年)がレッドカードで無念の退場。そのうえペナルティーエリア手前からのフリーキックというピンチに直面した。
しかし、ここをDFと交替した2年生のGK金大が好セーブでしのぐと、大阪朝高は1人減った不利をものともせず攻勢に転じる。終了15秒前、帝京GKが高く浮いたボールを取りこぼした所を主将・金洪周(3年)が見逃さず、劇的なシュートを決めた。
試合はそのままPK戦へ。PKでは金大が、相手シュートを1本止めたが、大阪朝高は2本を阻まれ、4―3で苦杯をなめた。
FWの金福天(2年)は、「やればできるという手応えを得た。次は選手権の府予選で圧勝し、全国で上位を狙いたい」と話していた。
「挑戦続ければ結果出る」
応援の同胞らの胸打つ
強豪相手のひたむきなプレーは、同胞らすべての胸を打ち、スタンドからは惜しみない拍手が送られた。
試合を観戦していた盛岡市内に住む朴俊行さん(44)は、「技術的にはまったく互角だったと思う。挑戦を続けていけば、必ず結果を出せるはずだ」と話す。
また、東京から北海道まで自転車で旅行中、学友ら3人とともに応援に立ち寄った朝大歴史地理学部4年の黄鎔秀さん(21)は、「惜しかったが、次につながる内容だった。今後に期待したい」と健闘を称えた。
攻めの姿勢最後まで
終了間際、帝京ゴール前。高く浮いたボールをおさえに相手GKが飛び出して来るのを見た金洪周は、とっさに、1年生のFW宋裕に「キーパーと競り合え」と指示した。宋は期待通りに動き、ボールがこぼれ出る。金は待ってましたとばかりに、的確に同点のシュートをけり込んだ。
帝京ほどの相手とのたたかいで、1人が退場になれば、普通失点は免れないが、逆に、終了間際に同点ゴールをあげたことは、大阪朝高の地力を見せ付けた。
大阪朝高サッカー部の身上である「攻め」の姿勢は、個々の選手の中に深く浸透しているようだ。無念の退場となったGK康徳昊は仲間に、「攻め続けてくれ、このままで終わらんとってくれ」と声をかけ、フィールドを出た。「あの言葉に押され、攻めの勢いも増した。同点シュートもそこから生まれた」と金は話す。
「先制されると弱い」と言われ続けたチームの短所を、選手らはピンチに奮い立つことで乗り越え、2度帝京に追いついた。
もちろん、課題はほかにもある。巧みなパスワークとドリブルで守備網を切り裂き相手の2倍を超えるシュートを放ちながら、資質の高い相手FWに要所をしめられ、失点を重ねた。
覇を争う全国の舞台では、それぞれのチームがひとすじ縄では行かない強さを持っている。この果てしないせめぎ合いの中では、1戦1戦の経験を糧に、自らのスケールアップを図るしかない。
選手らは、「自分たちの成長を実感している」(MF康政弘、3年)と力強く語る。
金正海監督は、「最後の気迫の同点シュートは、必ず次につながる」と話す。
次なる目標、全国高校選手権の予選には9月から臨む。(賢)