本の紹介/秋田の朝鮮人強制連行―歴史の闇を歩く―野添憲治編著
鉱山の宝庫秋田県には、中国人強制連行や花岡事件などの研究が少しづつ進み、県内でもそれらについてはわずかながら知られている。しかし、朝鮮人強制連行に関する研究は個人的にはあったが、組織的に行われてこなかったこともあって、県内でもほとんど知られていない。
そんな中で1996年5月、秋田県朝鮮人強制連行真相調査団準備会(1年後に調査団)が発足し、鉱山やダム現場などを訪れ、資料収集や聞き取り調査を始めた。多くの関係者がこの世を去り、また生き残った人たちの聞き取りも「今頃になって何を」と門前払いされる困難な状況での調査となった。県内に研究者がいないなどの理由で戦後50年を過ぎてからの調査開始となったが、関係者らは日本の戦争責任を正しく認識するうえで必要な調査であり、今後も継続してやっていくとしている。
6人の強制連行者と現場を目撃した日本人の証言、さらに当時、軍事的にも重要な拠点となっていた吉乃鉱山や大沢鉱山など朝鮮人が連行された現地調査の結果がつづられている。
戦後、県下の鉱山は次々に閉鎖されていったが、朝鮮人の記録はどこにも記されて来なかった。秋田県で始めて朝鮮人強制連行の歴史の闇に本格的にスポットを当てた1冊といえる。
定価=1700円+税、
発行=彩流社、東京都千代田区富士見2−2−2、
TEL=03−3234−5931