2000年−私のメッセージ
各地同胞が語る抱負


食糧自給へ最後の仕上げ/玄丞培

 今世紀中に朝鮮の食糧問題を解決し、21世紀には完全な食糧自給を達成する。その最後の仕上げを今年にやり遂げようと考えている。

 たくさんの在日同胞の支援によって、95年以来、朝鮮での複合微生物肥料(EM)生産は年々倍増し、昨99年には、その生産量が10万トンに達した。これは、朝鮮のほぼ全部の田畑に供給することができる量で、生産原価に換算すると、1000億円にもなる。このEMをすべて朝鮮の原料で作る技術的なメドが立った。今年は、その技術を確立する。

 そして今年10月、平壌でEMに関する国際大会を開き、そこで朝鮮がEM農法を完成させたことを宣言する予定だ。(64歳、化学者、在日本朝鮮人科学技術協会副会長)

 

常にチャレンジ精神を/姜鳳甲

 先人が「不況のときこそチャンス」と言っているように、常にチャレンジ精神を持ちたい。道に迷ったときは、来た道を引き返せと言う。われわれを取り巻くこの不況の中で、もう一度、創業時の原点に立ち戻り、無心の境地で自分自身、職場、会社、世の中を見つめ直して、「発想の転換」をすることが重要だ。21世紀は光通信の時代で、居ながらに世界とのビッグ・ビジネスが可能になるだろう。発想を転換すれば、まだまだビジネスチャンスはある。

 21世紀人として取り残されないためにも、自分の資質と能力を高めるために投資すべきだ。そして同胞社会、地域社会に少しでも利益の一部を還元し、社会から必要とされる企業作りを目指して努力したい。(58歳、国際ロータリー第2760地区西尾KIRARAロータリークラブ会長)



自然と一体化し漁獲率アップ/宋秀勝

 小さい時から海に対する憧れがあった。

 東京朝高卒業後、東京朝鮮歌舞団で5年間、活動した。しかし、心の奥底にあった「海での仕事をしたい」との思いをあきらめ切れず、93年に千葉県の水産会社に就職した。

 今は「第6中仙丸」船長として月に20日は海に出ている。早朝4時頃に出港し、夕方に寄港する。漁場は東京湾、穫れるのはスズキ、コハダ、ボラ、イナダ、タイなどだ。

 ソナーがあっても、潮は流れており、魚も動いている。魚は太陽、光の方向に向かって泳ぐと言われる。魚の動きを読んで漁場のポンイトをいかに絞るかだ。昨年はポイントを大体、絞り込んだ。太陽や潮の流れなど自然と一体化し、今年はさらに絞り込んで漁獲高を増やしたい。(31歳、「第6中仙丸」船長、千葉県)



音楽通じ、市民交流を/金桂仙

  専攻は声楽。先生から大学第3次への編入を進められており、3月の試験にトライしてみようと思っている。

 大阪朝高卒業後、大阪音楽大に進学したかったが、当時は門戸が閉ざされており、朝鮮大学校芸術科に進学した。その後は、金剛山歌劇団の前身である在日朝鮮中央芸術団団員として、全国各地を駆け回った。時々、民族の歌に関する歴史などを先生に代わって教える機会がある。

 現在、朝・日関係が大きく前進しようとする動きが見られるが、私は音楽を通じた市民レベルの交流をこれまで以上に深められたらと思っている。(49歳、大阪音楽大学短期大学部音楽科2年)



野鳥図鑑、南北交流の一助に/沈初蓮

 今年は3年間かけてやってきた大きな仕事が1つ完成する。南北全域を網羅した初めての朝鮮半島の野鳥図鑑が5月に出版される予定だからだ。この図鑑を通して、朝鮮半島の人々が野鳥に興味を持ち、自然保護に関心を持ってくれればと思う。南北交流の一助にもなれればうれしい。

 朝鮮大学校外国語学部を卒業して、ここで働くようになって3年。母国語である朝鮮語と好きな英語を生かして、祖国に貢献できる仕事をしてこれたことに誇りを感じる。自然保護は平和にもつながる「心清らかな」仕事。これからも仕事を通じて世界の平和に貢献していきたい。(25歳、日本野鳥の会国際センター研究員)



特別意味のある年にしたい/梁英哲

 私にとって今年は、残り9ヵ月の司法修習の期間、人生の中で大きな位置を占めた学生時代、大学4年間の貴重な留学同活動という準備期間を終えて社会に出る初年である。どの時期を振り返っても、家族と同胞に見守られていた感がする。一見同胞とは無縁な見知らぬ地での司法修習中も、いろんな所で同胞のアジュモニやアジョシに声をかけてもらい、朝鮮人であることのすばらしさを感じた。2000年代に入った今年は、私にとっては実務家として出発する年であり、在日同胞の権利、祖国統一で劇的な進展があるだろう。(25歳、司法修習生、名古屋市)



理想の法律家へスタート/全東周

 私自身にとっては、今年は理想の法律家を目指してのスタートの年となる。

 同胞社会の世代交替が進み、とりまく環境が急速に変化する中、4月には成年後見制度が施行され、近い将来、簡易裁判所の訴訟代理権が司法書士に与えられる。司法書士に対する同胞の要求も多様化すると思う。こうした現状に対応するためにも、従来の登記業務だけでなく税務問題等も勉強して幅広い実務経験を積むつもりだ。よりステップアップするために、司法試験にもチャレンジしたい。(24歳、1999年度司法書士試験合格者、東京都)