春夏秋冬


 かつて、フランスにミッテラン社会党政権が誕生した時、G7と呼ばれる先進7ヵ国体制を標榜する国の中ではもっとも早く、朝鮮と国交樹立をするのではないかと指摘された事があった。いち早く中国共産党政権を承認し、米国と一線を画した独自路線を歩み、そしてミッテラン自身が訪朝経験を持っていた事が背景にあったが結局、実現しなかった

▼朝鮮とイタリア国交樹立の報に接して、日本外務省高官は「日朝関係の改善作業にも好影響を与える」とコメントした。米国は、対朝鮮経済制裁の新たな緩和に乗り出す動きを見せている。国交樹立という事実以上に、その波及効果は大きい

▼それもそのはずで、例えば今後のスケジュールとして、他国の例にもれず最恵国待遇の設定(貿易関税の特恵措置)、人的物的交流の様々な協定の調印、科学・技術、文化、スポーツ交流などが進められていくことになる

▼数年前、イタリア国営アンサ通信社の東京支局長と親しく付き合ったことがあった。板門店、平壌で共に取材する機会もあったが、その彼がつねづね疑問を呈していたのが、在日同胞に対する日本政府の対応だった

▼なぜ朝鮮学校は各種学校扱いなのか、なぜ朝鮮学校生徒への暴行事件が繰り返されるのか、さらにはなぜ政府は植民地支配の謝罪・清算をしないのか…。日本社会の有り様は、彼の常識の尺度を越えたものだったらしい

▼そしてもう1つ口ぐせだったのが、「朝鮮のリョンソンビールは実に美味い」だった。平壌支局長を夢見ていた彼の顔を思い出しながら、まさに時代の変転を実感している。 (彦)