タラワ島でアボジが犠牲になった金承鎬さん
(タラワ・マキン島ウリ同胞犠牲者遺族会事務局長)
「まず公式謝罪が欲しい」
「日本は何も変わっていない」
兵庫県姫路市に住む金承鎬さん(56)は、日本政府の「一時金」報道に、怒りに満ちた言葉を投げつけた。
金さんのアボジである金在勲さん(故人)は植民地時代、南太平洋のギルバート諸島のタラワ島(現キリバス共和国)に姫路から「徴用」された。日本から約5000キロ離れたタラワ島は第2次大戦中、日本の海軍基地とされ、約1500人もの朝鮮人が「軍属」としてかり出された。
現地で朝鮮人は防空壕、兵舎、弾薬庫、砲台、飛行場補修など軍事施設建設の重労働を強いられた。しかし、1943年11月20日から開始された米軍の上陸作戦で、朝鮮人も数名を除いて全員が犠牲になった。
在勲さんも、妻の胎内にいた息子承鎬さんの誕生をこの目で見ることなく、この世を去ったのだ。
在勲さんの死後、姫路の自宅に遺骨箱が届けられたが、中には小石が2つ3つ入っていただけ。金さんの祖父はあまりの悔しさにその箱を投げ捨てたという。
金さんは「アボジが死んでからの56年間、日本政府から『すまない』の一言もなかった。中途半端なお金や『遺憾』の言葉ではなく、まず公式な謝罪があるべきだ。それなくしていくばくのお金を受け取る犠牲者がいるだろうか。身内を犠牲にされた無念さ、苦労は2代、3代にわたった。この無念さに対する謝罪が欲しい」と語気を強めた。