東京・上野 同胞法律・生活センター/
相談案件、2年で1800件
子どもの日本国籍を変えたい−70%占める民族固有の問題
南に不動産、朝鮮国籍、相続は?
在日同胞が日常生活で抱える問題は様々だ。外国人登録上の国籍欄の表示1つとっても「朝鮮」、「韓国」などとあり、同胞固有の問題には複雑で特殊な例が多い。東京・上野の「同胞法律・生活センター」(1997年12月開設)には様々な相談が後を絶たないという。
有資格者が対応
センター開設後、2年間に寄せられた相談案件は、税金問題を省いても約1800件に上る(下記
表参照 )。
相談には、弁護士、司法書士、税理士ら同胞有資格者らが対応している。
相談内容は、相続、国籍の問題がもっとも多く、ついで離婚・結婚、戸籍の問題など同胞固有のものが70%を占めている。
国籍では、婚姻した日本人の国籍を民族の国籍にしたいというものや、日本人配偶者との間に生まれた子の国籍を民族の国籍にしたい、というような相談などが寄せられている。
もっとも多い相続問題では、相続人が日本、南、北に居住しているが、被相続人の国籍は朝鮮なのでどうすればいいのかとか、離婚して親権を有する母だが、こどもの姓を母の姓にできないかなど、結婚・離婚に際しての姓の変更また、国籍の変更、在留資格の問題を伴うものなども多い。
日常生活と関連しては、口約束での信用貸しによる金銭トラブル(無尽の名義貸し)、また最近、不法占有者がらみの賃貸借トラブルなどによる相談も増えている。
センターで同胞の相談に当たっている殷勇基弁護士は、「同胞特有の相談で多いのは相続問題。同胞同士のトラブルもある。でも、基本的には、相談事に南北、日本もないと思っている。とにかく相談に来る同胞は悩み事があって来るので話しを熱心に聞いて上げることがまず大事だ。そして人権を尊重する意味でも、センターが今後、少しでも多くの相談を受けられるよう協力していきたい」と、話す。
エリアの拡大も
センターに寄せられた相談の7割は、民族固有の問題が占めているが、そのなかにはこれまで、日本人の専門家に相談しても、長い時間を要したあげく、要領を得なかったというものも少なくない。
そればかりか、日本人の専門家や役所に相談し、誤った情報を与えられ、問題が複雑になってしまったとう例もある。
都内在住の朝鮮籍の女性Aさんは、8年前に日本国籍だが朝鮮学校を卒業し、同胞企業で働く同級生の男性と結婚した。役所に婚姻届けを提出する際、生まれてくる子どもの国籍のことを聞いた時、朝鮮籍にできると聞いて安心して提出した。そして、子どもが生まれ、役所の窓口で子どもの国籍を朝鮮にしたいと申し出たが、父親が日本国籍なので無理だと却下された。
後で分かったが、それは役所の対応ミスだった。
Aさん夫婦はこの問題で、現在も悩み続けている。
また、外国人登録上「韓国」表示だが、民団と付き合いはなく、むしろ総聯の集まりに参加する機会が多いという大阪に在住する男性が、婚姻届けを提出しようと役所に行ったところ、役所の人に「韓国」表示なのに何故「韓国」に住民登録していないのか、と言われ、「韓国籍」なので「韓国」に行って住民登録をし、戸籍を作ってきてほしい、と言われたという例などもある。
法務局が、複雑な在日同胞の問題に対処しきれず、あやふやで誤った対応をし、朝鮮表示の人には、朝鮮とは国交がないからと言って片付けられてしまった例も少なくない。
同胞弁護士、司法書士らに相談し解決したものもあるが、まだまだ現状としては1人で悩んでいる同胞が少なくない。
センターでは今後、相談エリアを拡大し、同胞の切実なニーズに答えて行きたいと準備中だ。
(金美嶺記者)
センター開設後の上位相談案件数 (97年12月〜99年12月) 相続――――――――――――215 金銭貸借――――――――――197 結婚・離婚――――――――― 149 国籍――――――――――――130 在留資格―――――――――― 83 損害賠償―――――――――― 61 戸籍―――――――――――― 56 姓の変更―――――――――― 36 |
項目別の相談受付 月 : 民事・刑事(裁判関係一切)、人権侵害 火 : 登記、相続問題など 水 : 会社設立、飲食、風俗営業等申請、一般 木 : 高齢者・福祉、税務問題等 金 : 年金、保険、就職、その他 対面相談 : 午後1時30分〜4時30分。 東京都台東区東上野2−14−10 TEL
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