取材ノート/朝・伊国交樹立の報に触れ


 年始に飛び込んできた、朝鮮民主主義人民共和国とイタリアとの国交樹立のニュース。G7で初めてのこと。以前、日本に駐在するイタリア人記者から、朝鮮人の気質はイタリア人と類似したところがある、と聞いたことがある。同じ半島という土地柄のためだろうか。

 この先、ドイツ、オーストラリア、カナダと続く、という指摘もある。

 年始に参加した同胞の新年会では、「ウリナラ(朝鮮)もやるね」と、しばし国交樹立の話題に花が咲いた。「在日同胞を差別し、ら致がどうしたとか、散々ウリナラを敵視してきた日本なんて最後でいいよ」と、日頃の思いを晴らすように話す同胞もいた。

 だが、日本に定住する在日同胞にとって、朝・日の関係正常化は無視できない。祖国のありようも同様だ。

 日本社会に定住し、日本語しか話せないという、一見何ら日本人と変わらず、朝鮮半島に何ら帰属意識すら持っていない在日同胞であっても、朝・日の政治関係と無縁ではいられない。

 「朝鮮半島に内戦が起きて、在日の民族団体同士が抗争した時、自衛隊はどう戦うべきか」という発言をしたのは、1996年当時の梶山静六官房長官だ。有事法制の制定、自衛隊法改正などを念頭においた発言だったというが、思えばこの半世紀もの間、在日同胞は、こういうことに利用され続け、人権侵害も容認されてきた。

 折しも、朝・日国交正常化交渉の再開が日程にのぼっている。在日同胞の問題は、日本の植民地支配によって生まれたものである以上、日朝国交正常化交渉では徹底的に過去の清算に対する論議がなされるべきだ。

 在日同胞のかかえる特殊で複雑な問題を取材するたび、強く思うことである。   (金美嶺記者)