みんなの健康Q&A/
歯科(1) むし歯


かねだ歯科医院/金吉煥院長  

磨き残し、糖質の多回数摂取が原因/
予防に重要な「磨けている歯」、定期検診を

 Q なぜむし歯になるのですか。

 A   糖質(砂糖・炭水化物)がプラークの溜った口の中に入ると、約2分くらいで歯を溶かすのに充分な酸(pH5・5以下)ができ、その酸によって歯の表面からミネラルが溶け出します。これがむし歯です。この現象を「脱灰」といい、しばらくすると唾液の力(酸を中性に戻す緩衝作用)で酸は中和され、一度溶け出したミネラルが歯の中に戻ってきます。この現象を「再石灰化」といいます。

 つまり歯の表面では、この作用が繰り返されているのですが、歯磨きで磨き残しがたくさんあったり、甘い物を控えていても口の中にある時間が長くなると、このバランスが崩れて脱灰作用ばかりが進行して、穴があいたむし歯となるのです。

 歯磨きで大切なことは「磨いている」と「磨けている」とは違うということです。「磨けている」ことが大切です。歯と歯の間・歯と歯ぐきの間・奥歯の噛み合わせの溝の3ヵ所がもっともむし歯になりやすい部分ですが、ここに付着するプラークを取り除くことがポイントです。

  どのように予防すればよいのでしようか。

   図に示すように、4つの輪が重なった所にむし歯(歯周病も同じ)ができる条件が揃うわけです。つまり歯質が弱く、プラークが多く、砂糖を含む食べ物が口の中に入っている時間の長い人はむし歯になりやすいといえます。よってむし歯には次のような予防策が考えられます。

 第1にビタミン、ミネラルなどバランスのとれた栄養をとり規則正しい生活を送る。

 第2に1日にとる糖質(砂糖など)の量でなく回数を制限する。アメを頻繁に食べたり、ジュースを何回にも分けて少しずつ飲んだりせず、できるだけ一度に食べたり飲んだりし、甘味食品はシュガーレスのものを選ぶ。酸を作らないとされるキシリトールが今、注目されています。

 第3に歯磨き(ブラッシング)は「磨いている」ではなく「磨けている」を目指す。これは大変重要です。歯科医院で磨き残しがないか何度もチェックしてもらい、根気よく自分にあった磨き方を会得することが大切です。

 最後に、フッ素などにより酸に溶けにくい歯を作る。むし歯予防にフッ化物の利用は有効ですが、日本ではフッ化物の積極的な利用が遅れています。家庭でのフッ化物洗口や、フッ化物配合の歯磨き剤の使用を勧めます。

  一度治療しても、また悪くなることはありますか。

 A  もちろんあり得ます。治療が必要となったむし歯を早期に治療することは重要です。しかし治療するといっても、実際はなくなった部分を補う処置ですから、元の歯に戻るわけではありません。そのために予防と共に定期的に健診を受けることが大切です。(3回連載。京都市山科区音羽野田町7―5、TEL  075・581・6480)