朝鮮料理に秘められた効用(2)
食材(1) ニンニクと唐辛子
韓啓司・恵クリニック院長
スタミナ増強、生命力高める
食欲増進、発ガン抑制も
「においのバラ」
かつて「朝鮮人はニンニク臭い」などと言われて日本人から差別されてきた。そのため朝鮮人がニンニクを食べることをコンプレックスに思っている人がいれば、とんでもない誤解だと言いたい。
ニンニクは中近東が原産で、朝鮮には10世紀頃中国から伝えられた。エジプト、ギリシャ、ローマなどでも古くから伝えられ、「においのバラ」とか「農民のための万能薬」と呼ばれていた。
日本を除いて世界中、どの国でもニンニクなしでは料理が出来ないといわれるほどだ。たまたま日本では肉食文化が発達しなかったためニンニクというスパイスが必要なかっただけだ。
ニンニクの臭いの元はアリシンという成分。アリシンの働きで大事なのは、豚肉に含まれるビタミンB1と結合するとアリチアミンという物質になり、ビタミンB1を活性化する働きをし効果倍増になる。
さらにアリシンにはペニシリンに匹敵する殺菌力があるので生レバーのタレに使うことにより食中毒の予防に役立っている。
ビタミンB1は疲労回復に効果がある。スポーツ選手がよく豚肉にニンニクを入れた料理を食べて疲労回復をはかるのはそのためだ。
ニンニクにはスタミナ増強作用と発ガン抑制作用のあるスコルジニンという成分が含まれる。ニンニクを食べると風邪予防にもなると言われている。それはニンニクには健康を守り、生命力を高める栄養が豊富に含まれているからだ。
辛みの元が防菌
唐辛子は中南米原産で、15世紀末にコロンブスによりヨーロッパに伝えられ、17世紀頃に朝鮮に伝来し、キムチなどに使われるようになった。キムチが赤くなったのはそれからだ。ちなみに、それ以前は香辛料として胡椒が使われていた。
辛い料理は朝鮮の専売特許ではない。インド、エジプト、メキシコ、アフリカなどの熱帯地方の国々では朝鮮よりも、さらに辛い料理が常食されている。これは暑さによる食欲減退の対策として、辛味が胃腸の働きを増進するのを利用したものだ。
唐辛子の辛味の元はカプサイシンという成分で、(1)胃粘膜刺激作用(食欲増進)(2)血管拡張作用(しもやけ防止) (3)防菌作用(カビ止め)などがある。
また朝鮮で使う唐辛子は、日本のものと違って肉厚の甘味のあるもので、これを粉にしてたっぷりと使う。日本のタカノツメのように辛味のみが目的ではない。
その成分にビタミンA、ビタミンCが豊富に含まれるが、これらは発ガン抑制ビタミンである。
唐辛子にはまた、脂肪分の酸敗抑制作用(抗酸化作用)がある。だから辛明太子という脂肪分を含んだ食品は、唐辛子を入れることにより酸化を防いで保存することが出来るのである。
日本の食習慣に合わせて考えれば、唐辛子やニンニクはあまり好まれない食べ物だ。3、4、5世たちが日本人的な考えで、こんな素晴らしい朝鮮の食材を誤解せず、誇りをもって欲しい。 (次回は食材 (2)朝鮮人参&ゴマ、ヤンニョム)