そこが知りたいQ&A/介護保険ってどんな制度?
在日同胞にも適用/高齢者を社会で支える


不可欠な無年金者の救済借置
1世の正確な意思反映も

  4月から介護保険制度が実施されますが、どのような制度ですか。在日同胞にも適用されますか。

  一言でいえば、日常生活において介護(世話)を要する高齢者を、社会全体で支える制度だといえます。もちろん在日同胞にも適用されます。 25年後には4人に1人が65歳以上という予測ともあいまって、誰もが直面しうる問題について、家族の負担をできるだけ軽くし、介護を社会全体で支えようというのが、介護保険制度なのです。

  介護保険の対象となる在日同胞は、どのような人でしょうか。

  40歳以上の同胞が入ることになりますが、65歳以上の同胞を第1号被保険者、40歳以上64歳以下の同胞は第2号被保険者と呼びます。いずれも保険料を払わなければなりません。

 第1号被保険者は、理由のいかんによらず日常生活において介護や支援が必要と、介護認定審査会が認定すれば給付が受けられます。それにたいし、第2号被保険者については初老期痴呆や脳血管疾患など老化で起こる病気によるもののみが、介護や支援の対象となります。つまり交通事故に起因するものなどは、給付対象になりません。

  給付を受けるには、どのような手続きが必要ですか。

  まず被保険者が市町村の窓口(介護保険課など)に申請書を提出します。申請書は役所の窓口に備置されており、申請は本人や家族の他、介護保険施設にも頼めます。申請受付は、すでに昨年10月から行われています。給付を受ける手順は次のとおりです。

 介護認定の申請→市町村職員または介護支援専門員の訪問調査(心身の状態など)、かかりつけ医の意見(なければ市町村が紹介)→介護認定審査会(保健、医療、福祉の専門家による判定)→認定、通知→ケアプラン(介護サービス計画)作成→在宅介護サービスまたは施設介護サービス。

 認定結果に不服があれば、都道府県の「介護保険審査会」に申し立てを行うことができます。

 認定は、自立(非適用)、要支援、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5の別に行われ、原則として6ヵ月ごとに見直されます。

  要支援・要介護の認定がされると、どのような給付(サービス)が受けられますか。

  「要支援」では、家事など日常生活に支援が必要な状態の人が、在宅サービス(家庭訪問による介護や介護施設への日帰り通所、短期入所)のみが受けられます。

 「要介護」は寝たきり、痴呆などで常に介護を必要とする状態の人が、在宅と施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護職員が手厚く配置された病院など)両方のサービスが受けられます。数字が大きくなるほど、介護度が増します。

 この他、要介護4、5で、施設サービスを受けなかった人を介護した家族に年10万円以下の慰労金を支給することなどが、特別対策として盛り込まれました。

  保険料の支払いはどのように行い、額はいくらぐらいになりますか。

  第1号被保険者は、原則として老齢年金から天引き(年金18万円以上の場合)され、第2号被保険者は加入している医療保険の保険料に上乗せして一括して払い込むことになります。それぞれ本人の負担額は平均月1300円から2000円程度になるもようです。なお、前者で無年金者などは直接、市区町村に支払わなければなりません。

 第1号被保険者については、やはり特別対策として、制度実施から6ヵ月は無料、その後1年間は半額とされました。

  介護保険でサービスの適用を受けた場合、それぞれが負担する費用はどうなりますか。

     費用の1割を利用者が負担し、9割は公費(税金や保険料など)でまかなわれます。

 利用者の負担額の上限は、一般世帯(夫婦)で月3万7200百円、市町村税非課税世帯で2万4600円、老齢年金受給者(単身)で1万500円になると思われます(施設利用者の食費代は含まず)。

  新聞報道などをみると、いろいろ問題もあるようですが、在日同胞社会が介護を必要とする同胞高齢者のためにすべきこととして、どのようなことが考えられますか。

  まず、同胞高齢者の実態を正確に把握することが不可欠です。それと並行して、心身の状態が介護を要する人には、権利の行使として申請を行うよう勧めることです。

 市町村の職員などの訪問調査の際には、言葉の不自由な同胞1世の意思が正確に反映されるよう同席して通訳などを行うことが大事です。かかりつけ医を持たない人に同胞の医師や病院を紹介することも必要でしょう。

 また、要介護と認定された同胞高齢者のケアプラン作成に親身に協力することが考えられます。そして、高齢者たちを自宅や施設に適宜に訪ね、心の健康へのケアを怠らないことです。

 すすんでは、同胞社会が自前のケアマネジャーや介護支援員の要請、そしてさまざまな介護施設の設立なども視野に入れるべきでしょう。

 さらに無年金状態のまま放置されている同胞高齢者に対する救済措置を速やかに講じるよう、日本政府に働きかけることが重要です。 (殷宗基・ジャーナリスト)