明日からベルリンで朝米会談
新関係発表への予備折衝/ワシントン高位級会談開催が焦点
短期目標で双方に実績
米政府の交渉能力が鍵
明日22日からベルリンで朝米高位級会談が開かれる。情報を総合すると今会談は、昨年11月のベルリン会談の続開で、米国の対朝鮮経済制裁解除と朝鮮のミサイル問題、金桂寛副相よりもさらにハイレベルな人物の訪米問題などが協議されると言われている。いまのところ展望は不透明だが、今会談が今年、および2000年代以降の朝米関係、東アジア情勢を占う重要なポイントとなることは間違いない。
前例のないイベント
米国務省は今月6日、ルービン報道官の声明を通して22日からベルリンで、カートマン朝鮮半島平和担当特使が金桂寛朝鮮外務省副相と会い、朝米関係正常化のための高位級会談の開催日程などを論議すると発表した。
そしてハイレベルな朝鮮人士のワシントン訪問は「外交上の儀典や実質的な問題において、重要で前例のないイベントになるだろう」と述べた。
また米国務省の高級官吏も昨年末、南朝鮮通信社記者に「朝米高位級会談が両国関係正常化に向けた 第1段階 」だと強調し、われわれは近い将来に(朝鮮の)ミサイル実験猶予もしくは持続をもたらすだろう高位級会談が、ワシントンで開かれることを期待する」と語っている。
以上を総合すると、22日からベルリンで開かれる朝米会談を米国は、ワシントンで開かれる朝米高位級会談の準備会談として位置付けていると言える。
ワシントン高位級会談については、朝鮮側も昨年12月10日付の朝鮮中央通信が「朝米高位級会談の早期開催で合意した」と伝えている。
なぜワシントンか
朝米高位級会談開催で双方が合意しているわけだが、朝鮮のハイレベル人士が単に物見遊山でワシントンを訪問して終わりというわけにはいかない。
金桂寛副相よりもハイレベルな人物と言えば、外交関係では姜錫柱第1副相、白南淳外相、金永南最高人民会議常任会議委員長の名前を挙げられる。
通常の外交交渉で外相は、指揮はしても直接、交渉に臨むことはなく、ほとんど実務折衝で交渉が詰められ、双方が合意に達した時点で外相が合意文書に署名するというケースが一般的だ。ちなみに第1副相は、大臣に準ずる。
したがってワシントンで朝米高位級会談が開かれれば、それは間違いなく朝米の新しい関係を内外に宣言する発表があると思われる。それでなければ、ワシントン以外で会談を行っている朝米が、わざわざワシントンで会談を開く意味がない。
そして、その予備会談とも言えるのが、22日からのベルリン会談なのだ。
問題は、ワシントンで発表される合意の中身だが、難航が予想される。
政策の根本転換が
朝鮮側が求めているのは、短期的には対朝鮮経済制裁の全面解除と中長期的には朝米平和協定締結と駐南朝鮮米軍の撤退で、米国側はミサイルの発射実験中断(短期)、ミサイル関連技術輸出規制(MTCR)による長距離ミサイルの開発中断(中期)、ミサイル開発、配備の中止(長期)を要求している。
このうち、短期目標の部分で双方は、ミサイル実験の暫定的中止(朝鮮)、対朝鮮経済制裁の一部解除(米国)を実施している。
しかし、短期目標の部分でも双方の主張には隔たりがある。
米国が昨年9月に発表した制裁解除は、「敵国通商法」によるものだけで、テロ支援国規定による制裁措置は、まだ存続させている。また、解除した制裁措置の具体的な施行令は、早ければ11月中に発令されるとしていたのに、解除発表から4ヵ月が過ぎても実施されていない。
一方、米国は、現在のミサイル実験暫定的中断を恒常的中止に変えるのが目的で、そのために経済制裁解除を取引材料にしているのだ。
また中長期的目標における双方の主張の隔たりは大きく、一言で言えば米国が対朝鮮政策を根本的に変えなければ解決は難しいだろう。ペリー朝鮮半島政策調整官が発表した報告書の水準ではなくである。
中長期目標の隔たりはさておいて、今回のベルリン会談では、双方の短期目標を主眼にして交渉が行われると思われるが、前述の朝鮮中央通信が「国の自主権に属するミサイル問題のような重大事をあと1年しか任期が残っていない現政府と討議決定するというのは、われわれにとって1つの賭けである」と指摘しているように、果たしてクリントン政権に対朝鮮交渉能力があるのかどうかが、鍵となるだろう。
(元英哲記者)