都・高齢者賃貸住宅確保へ/2001年から新制度
公的機関が身元保証人紹介
2重に難しい同胞高齢者に視点を
東京都は増える一人暮らしの高齢者や高齢者夫婦の住居確保に向けて、公的機関などが身元を保証する支援制度の創設を、2001年度から実施する方向で検討している。都内には、同胞高齢者も多く在住しており、制度の実施にむけた都の取り組みが、どこまで実効性のあるものになるのか注目されている。
相談体制も整備
東京都が2001年度からの実施にむけて検討を進めているのは、高齢者が賃貸住宅を利用しやすい条件を整えるための新制度だ。 区市町村や損害保険会社、不動産会社などを加えて検討会を設置する。
都が新制度の導入を検討することになったのは、高齢者世帯の場合、保証人を探すのが難しく、賃貸住宅を利用できないケースが多いことからだ。それに対応するための、身元を保障する公的機関の設置、さらに高齢者の入院・死亡など緊急時の財産処理といった万一の場合にも備えている。また、一人暮らしの高齢者に対し、介護や家事支援が必要になった時の相談体制もあわせて整備していく。
今年4月からは、介護保険、心身が衰えたり痴呆や精神的な障害などで判断力が十分でない人たちを法的に保護する成年後見制度が施行される。
急速に進む高齢化時代に伴い、高齢者を社会全体が支える仕組みに改めていこうとする作業の一環だといえる。
何件回っても「だめ」
都内の65歳以上の高齢者人口は、約190万人(外国人を含む)。高齢者のいる世帯が110万戸以上ある。このうち一人だけで暮らしている人、また高齢者だけで暮らしている世帯は全体の4割を越す。
現在、高齢世帯の場合、まず保証人を探すのが難しく、そのため賃貸住宅を利用できないケースが多い。また、貸す側の家主が万一の場合を心配し貸したがらない。
在日同胞の場合は、さらに難しい。高齢者であり、在日外国人となれば、借りるのに保証人をたてても難しく、賃貸アパートへの入居には2重、3重の苦労が伴う。
都内在住の一人暮らしをしていた同胞女性(79)は昨年、家主から住んでいた賃貸アパートが老朽化したため、壊して駐車場にすると言われ、アパートを出ることになった。近隣の賃貸アパートに移ろうと、保証人を立てて不動産屋を何件も回ったが、高齢者を理由に、部屋を貸してもらえなかったという。結局、住み慣れた地域を出て、同胞の不動産屋のある地域にひっ越さざるを得なかった。
東京都はすでに外国人のための入居差別禁止条例を制定しているが、同じく条例化している川崎市などに比べると、「賃貸人に対する啓発」といった内容にとどまり、実際、効果を発揮しているとはいいがたい。
都が92年に不動産業者を対象に実施した調査によると、貸主が入居を断る対象のトップが一人暮らしの高齢者と外国人とある。在日同胞高齢者は賃貸住宅への入居が2重に難しいという状況もあり、こうした視点にも目を向けながら、条例化は法的に整備していくなど実効性のあるものにしていく作業が問われている。(金美嶺記者)
「定期借家制度」/交渉力の弱い人には負担?
昨年12月衆議院で、契約期限が来たら家主側が契約を打ち切ることのできる「定期借家制度」を導入するための法案が成立した。 「定期借家制度」の導入は、今までの日本の借地借家法では自分が貸し家を使うことになったなど、家主の正当な理由がない限り、契約を打ち切れないという内容を修正したもので、貸す側に有利なものとなる。 今までの制度では、家主が安心して貸すことができないので、良質な借家が出回らないとの理由で修正されたが、法案成立後、高齢者、障害者、外国人などの交渉力の弱い人を守るシステムが不足しているなど、批判も少なく、約1700万世帯と言われる借家住まいの人々に大きな影響を与えると思われる。 今回、都が打ち出した高齢者のための賃貸住宅確保の問題が、今年3月から施行となる「定期借家制度」とどう絡んでくるのか、論議が注視されている。 定期借家制度 契約期間が終われば家主の通告で契約をうち切ることができるというもの。 新規の契約のみに適用され (1)契約の際、家主は借主に対し、期間満了で賃貸借が更新なく終了する旨を書面で交付し、(2)説明をしなかった際は、その契約は無効となる。なお同じ借家の再契約(更新)については向こう4年間は従来通りの契約制度が適用される。 |