奈良市が外国籍市民懇談会/教育などの意見提起
同胞ら11人が参加
継続的論議で実のある場に
奈良市では初めてとなる市長と外国籍市民との懇談会が18日、市生涯学習センターで催され、在日同胞をはじめ中国、フィリピン、イギリス、米国の合わせて11人の在日外国人が参加。大川靖則市長と話し合った。
懇談会は、「国際文化観光都市としての開かれた街づくり」を目指す奈良市が、外国籍市民の声を行政に反映させようと設けたもの。
大川市長からの、「同じ市民の立場から住みやすいまちづくりに向けた要望を出して」との呼びかけに対し、参加者からは教育問題や役所の使い勝手、日本人の外国人観など、様々な意見が出された。
市では、今後もこうした場を設けて行きたいとしている。
外国人住民の声を汲み上げる自治体の取り組みは、1996年に神奈川県川崎市が条例に基づく「外国籍市民代表者会議」を置して以来、東京都や京都市など各地で追随する動きが出ている。
奈良市には、53ヵ国、約2800人の外国人が暮らす。今回は6ヵ国の代表を集めたにとどまったが、それでも、出された意見の内容は様々だった。
同胞の姜清美さん(45)は、「学校教育や就職など、様々な面で外国人は民族差別を受ける。アルバイトをするだけでも国籍が引っかかる」と発言。ある程度のバックアップがある留学生に比べ、在日同胞の場合は一般の人々の理解が乏しいことから差別が生まれている点を指摘した。また康暎子さん(45)は、「自分は日本で生まれたが、民族性を養うために子供に民族教育を受けさせている」と述べ、民族性を受け継ぐ重要性を強調した。
ただこの日は、「街中の看板に外国語表記を付けてほしい」「役所に外国語を話せるスタッフを」など、参加者の多数を占めたごく最近に日本に渡って来た人たち、いわゆるニューカマーが抱える問題が主に提起された。
自らの意思とは関係なく日本に住むことになり、祖国解放から半世紀以上にわたり権利獲得に努めてきた在日同胞と、こうした人々とでは根底から事情が異なる。
両者の意見を的確に施政に反映させるには、行政と外国人住民、そして外国人住民どうしの継続的な対話が必要と言える。
例えば分野別の分科会を持ち、年数回の会合を定例化している川崎市の「代表者会議」は、これまでに入居差別の防止や民族教育問題で提言を出している。
奈良市の懇談会では中国籍の陳椿楠さんが、「電車の中で中国語を使うと、座っていた女性が持っていたカバンをしっかり抱き締め出した。中国人は泥棒のように見られているのかと心が痛んだ」と自らの体験を語り、「中国人は悪い人ばかりではない。マスコミには(わい曲せず)正しく報道してほしい」と強調した。このような、外国人の基本的人権や外国人住民と日本市民との相互理解に関する問題は、在日同胞とニューカマーの双方にとって大事な問題と言える。
今回は参加者からも「言いたいことがうまく言えなかった。来年以降も続けてほしい」(康さん)との意見が多かった。
粘り強い継続的な対話は行政と外国人代表の双方にとって骨の折れる作業だ。しかし、基本的人権の確立や、それに基づく真の国際化の進展など、得られるものは少なくないはずだ。