取材ノート/「テクニックではなく対人関係」
年末に、3人だけ集まった忘年会の席で、友人の商工人から心温まる話を聞いた。「3ヵ月も給料を支払っていないのに、社員たちは『社長、石の上にも3年というじゃないですか、苦しくても一緒に頑張りましょう』といってくれている」
杯を酌み交わした後、続けて彼は「四苦八苦しながらも頑張れるのはこんな社員がいるからだ。『競争』や『効率』などが尊ばれているが、最後はテクニックではなく、対人関係にあるという事を最近身にしみて感じている」と述べた。また、大手企業と交渉している彼の話を通じて、意外と住友などの大手企業のなかで義理とか、人情とかを重んじる風潮が今も残っているということも知った。
どんな時代になっても、心を開いて話すことのできない者は孤立してしまう。いいアイデアがあっても他の人の協力なしにはできない。人間関係がうまくいかない会社は生き残れない。対人関係は世代を越えて必要とされる普遍的なものではないだろうか。
ハーバード大が行った「ビジネスマンの昇進の原因は何か」と題した調査によると、仕事の能力が15%に対し、人間性は85%と圧倒的に比重が高かったという(週刊朝日99年12月31日〜2000年1月7日号)。
「IT(情報技術)革命」に挑むソフトバンク社長・孫正義氏と、外食産業の風雲児ワタミフードサービス社長・渡辺美樹氏は、能力と共に対人関係を重視しているからこそ業績を伸ばしているのだ。
こういう時代だからこそ人を思いやる気持ちが大事なのかも知れない。友人が語った対人関係の基本は、裏でこそこそと人の悪口を言わない事。「では、おまえは…」。思わず腕を組んで考えこんでしまった。
(金英哲記者)