「金子文子」/山田昭次著
清々しい自我の貫徹
金子文子は東京で苦学中の1922年に在日朝鮮人の朴烈と結婚した。父は朝鮮人との結婚は家系を汚すという理由で文子を勘当した。翌年9月の関東大震災の時に夫・朴烈と共に逮捕された後、刑法第73条(大逆罪)および爆発物取締罰則違反容疑で起訴され、1926年、3月25日に死刑の判決を受けた。これは大震災時の朝鮮人虐殺を正当化しようとした政治裁判だった。
では金子文子と朝鮮を結びつけたものは何だったのだろうか。著者は本書の中で、文子の思想形成の源流をたどっている。文子は1912年末、9歳の時に山梨県の母の実家から朝鮮忠清北道清州郡(現清原郡)芙蓉面に住む父方の祖母や叔母の家族に引き取られ、1919年4月、16歳の時までここで過ごしている。多感な少女時代は朝鮮の山河で育まれた、といえるのだ。
近代日本によって抹殺された1人の女性の凄まじくも、清々しい自我の貫徹とさらに彼女の思想と生き方を、現代日本に蘇らせた著者の生き生きした筆は、圧倒的な感動と迫力を与えてくれる。読み終えた後、しばらく動けない程だった。特に女性たちに読んで欲しい書である。(定価=3914円、影書房、03・3389・0533)
オモニのふところ、アボジの背中/2月から新連載
2月の紙面から月曜日付けで「オモニのふところ、アボジの背中」を始めます。アボジやオモニの思い出をお寄せ下さい。家庭を築き、子供たちに何を残そうとしたのかを、近親者の目から見てみようと思います。思い出に残る言葉、料理、暮らしの行事、雰囲気、何でも具体的に書いて下さい。長さは800字、アボジかオモニの写真を添えて、本紙「女性・家庭欄」にお寄せ下さい。TEL
03・3268・8583。