私の会った人/岸恵子さん
日本映画のあらゆる興行記録をぬりかえた主演映画「君の名は」。あれから50年近くたつが、たおやかな優美さは変わらない。
パリに居を構えて、東京とパリを往復する暮らしを40年。昨年母親が亡くなり、久し振りに本拠を日本に移した。
エッセーを書いたり、ドキュメントを出版したり。時には砂漠やジャングルに飛んで、キャスターをつとめ、常に関心は世界に向いている。
89年、「パチンコ疑惑」と絡んだ朝鮮学校の子供たちへの暴行事件が頻発したことがあった。この時「僕がいじめた訳じゃない」という首相の発言を偶然、東京で聞いて、「腰が抜けるほど驚いた」。
「日本は島国なので、その中にいると安泰して満足してしまう。世界に向かって目を開くという習慣もない。アメリカにだけ目を向け、アジアやヨーロッパには知らんぷりです」と怒っていた。
「フランスでは、民族や人種で差別することはもっとも恥ずべきこと。私、パリに住んで一番よかったのは、そのことです」
「政治家が子供っぽいですね。教育の中で日朝間の歴史をきちっと教えていくべきです。大人が改ざんしてはいけない」
「戦後、敗戦国の日本はそのままで、朝鮮が2つに分断された。他国の悲劇で日本は幸せになった。そのことを忘れてはならないのです」
人間として言いたいことを言うつもりよ、という生き方は、魅力的だ。(粉)