中小企業も情報化へ/
シュミレーション、ASPで競争力アップ


 低コストで企業の情報化を可能にするASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)が本格化すれば、情報化で競争力アップを図る中小企業が増えるはずだ。どんなケースが考えられるか、同胞業者の場合を想定してシミュレーションしてみた。ワンポイント解説は、シーズコーポレーションの辛根成社長。(金賢記者・参照

焼肉店の場合/共同仕入れでコスト削減
手持ち端末で円滑推進


 ある地方の焼肉店経営者ら5人は、県外の大手チェーンが地元への大々的な店舗展開を準備中と知り、共同で対策を練っていた。

 「相手は安さが売りの大型店。正面からの価格競争は無理だ」

 相談の末、宣伝やサービス向上、販売促進キャンペーンなど対抗策の資金を捻出できるように、野菜や飲み物の仕入れを一本化して量をまとめ、安い業者をインターネットの入札で選ぶことにした。

 しかし、5店の仕入れ量を改めて合計して見ると、スケールメリットを得るには今一つインパクトの欠ける数字にしかならない。そのうえ、互いの店が離れているため、思ったより配送費がかさむことが分かった。

 そこで、それぞれ県内で数店舗を運営する2つの同業者にも参加を呼びかけた。それだと仕入れ量が十分な規模になり、店舗間の距離も埋まるので配送コストも苦にならない。

◇          ◇

 だが、ここでまた問題が生じた。円滑に共同仕入れを進めるには、発注と決済を共通の情報システムで行う必要がある。しかし、新たに参画を求める企業は、それぞれ違う形の販売時点情報管理システム(POS)を採用していたのだ。

 5人の経営者は、手持ちのパソコンで間に合わせようと思っていたので、2種類のPOSに対応するのは荷が重過ぎた。

 「システム構築にお金をかける余裕はない。白紙に戻そうか」

 諦めかけていたところ、念のため相談したソフト会社からASPを勧められた。データセンターに手持ちの端末をつなぐだけで共通のソフトが使え、POSへの対応も問題ないという。料金は、1社当たり月額約1万円という安さだ。後日、3社が共同仕入れへの参加を希望してきたが、受け入れもスムーズに進んだ。

  【ワンポイント解説 】  
 ASPではソフトを買う必要がなく、ネットで選んでアクセスするだけ。データの処理や保存、バックアップもサーバーまかせなので、大きなハードディスクも要りません。

パチンコ店の場合/暫時システムで適時出店
最新ソフトを新旧機器で

 ある県でパチンコ店を5店舗経営しているA氏は、新たに6店目を出そうと計画中だが、情報管理システムをどうしようか迷っている。

 既存店には、数年前に導入したシステムがあるのだが、ハード、ソフトともに、そろそろ旧式化してきた観がある。飲食業などへの経営多角化を考えていることもあり、それらの事業を効率良く統括できるシステムに作り変えようかと考えていた。

 ただ、遊技機用の新技術の開発が進められているうえに、不正対策で業界に新たな動きが出て来そうな気配だ。

 「システムを新しくするなら当然、それらの内容も踏まえなければ」

◇          ◇

 問題なのは、その具体的な内容がなかなか伝わって来ず、時期についてもおおよその予測しかつかないことだ。

 既存のシステムはすでに償却を終えており、新たな投資に負担感はない。しかし、いずれ入れ替えるシステムを新店に入れることには抵抗がある。時期を待とうにも、新店を出そうと考えている場所は街道沿いの好立地で、もじもじしていると他社に先を越されかねない。

 そんな時、知り合いのエンジニアからこんな話を聞いた。

「ASPを通せば、古いハードと新しいハードの両方で同じソフトを運用できますよ」

 助言に従い、まず新店のハードは新型のものを入れ、既存店のシステムはソフトだけを捨てて機器類は残すことにした。ソフトはASPで借りておいて、業界の動向がはっきりしたら新しいものに更新する。

 【ワンポイント解説 】 
 ソフトはすべて、データセンターにある高性能なサーバーで処理されるので、端末の機種や性能は問いません。しかし基本的には、ASPのソフトは、ウインドウズ95やパワーマッキントッシュ以降のOSで起動するものになります。