南北共同宣言以後の南北経済協力
民族経済の均衡的発展へ
投資環境整備へ一歩前進 委託加工中心に進む合弁・合作 南北経済協力における制度整備の問題について話し合った第1回南北経済協力実務接触(9月25〜26日、ソウル)で、双方は、投資保証や2重課税防止などの制度的保証を早い期日内に整備することにし、18日からの第2回接触(平壌)で、合意書作成に向けて継続協議することで合意した。今回の協議の意味と、南北経済協力の現状をまとめた。 ルール作り 今回の協議は、6月の南北共同宣言でうたわれた、「民族経済の均衡的発展」を目指すという合意に基づき、開催されたものだ。 民族経済の均衡的発展とは、平和統一の実現という民族共通の志向に基づき、経済においても民族的な立場から南北が協力し合い、互いに発展することで、分断経済を民族経済に変えていこう、というものだ。 そのためには、双方が民族経済の均衡的発展という目標に照らして、一方が不利益を被らないよう努める必要があり、そのための制度的枠組みとルール作りが求められる。 今回の協議も、こうした経済協力を円滑に進めるルール作りが目的である。 交易額20倍 取り引きされる物資では、北から南へは農林水産物や金属製品、南から北へは化学工業製品や運搬機械が多い。繊維類は南北双方を行き来している。北のコンピュータソフト開発技術への信頼度が南で高まっていることから、コンピュータ関連製品も増えている。 南北経済交流の最も顕著な傾向としては、直接的な品物のやり取りよりも、原材料を北に持ち込んで加工・生産し、完成品を南の企業が販売する「委託加工」の急増が挙げられる。 南の企業が北での委託加工に注目しているのは、ソフト開発に代表される北の技術水準が、高く評価されているからである。 南から北への委託加工の交易額は、南北交易総額の約3分の1を占めるまでになっている。カラーテレビ(大同江テレビ―三星・LG)やタバコ(光明星総会社―タバコ人参公社)など生活に密着した製品が多く、品質への評価も高い。 今回、合意書の発表は持ち越しとなったが、経済担当者同士の協議が実現したことで「南北経済協力は急進展に向かう展望にある」(インターネット週刊東亜9月28日付)。 南北共同宣言での合意が経済協力拡大に向けた第1ステップとすると、これらの合意の履行に向けて、より具体的な話し合いが持たれた今回の協議は第二ステップと見ることができる。 当面は、好転している情勢を踏まえ、南北が互いに投資をしやすくするシステム作りと、信頼の醸成に重点が置かれると見られる。うまく進めば、南北経済交流は「安全性、規模、双方経済への影響など、以前とは質的に大きく変化する」(ハンギョレ新聞9月27日付)可能性を秘めている。 (柳成根記者) ◇ ◇ キーワード 南北間では現在、経済協力を制度的に保障するため、4つの問題について協議されている。いずれも、企業が投資しやすい環境を作るためのもので、政府間で枠組を決めたうえで企業間取引に適用される。 投資をする側とされる側の間で契約が交わされても、事業が必ずしも順調に進むとは限らない。途中で失敗も十分あり得る。 こうしたケースを想定して、投資に失敗した際に、投資した財産分に見合う金銭補償など、一定の補償を行い、投資企業をきちんと保護しようというのが「投資保証」である。投資を促し、双方の信頼関係を保つための枠組みとして、今回の協議でも集中的に討議された。 二重課税防止 例えば、日本のある企業が海外に工場を作った場合、所得に応じた税金はその国から課せられる。ところが、日本の法律では、海外に進出した分も含めて、国内の企業の所得にはすべて税金が課せられる。つまり、一つの所得に対して、日本の法律に従って日本に税金を支払い、相手国にも同じ税金を支払わなければならなくなる。これを「2重課税」という。 国際的には「租税条約」という、どちらか一方の法律に従うことで2重課税が起こらなくする条約が、多くの国の間で結ばれている。 南北間でも今回、こうした2重課税防止策を取って、無用なトラブルをなくすことが話し合われた。 交易紛争解決 貿易における紛争とは、何らかのトラブルで契約どおりに進まなくなった場合に、被害者が相手に苦情を申し立てたり、損害賠償を請求することを指す。つまりクレームである。貿易用語でも「貿易クレーム」という。当事者同士で話し合って決着がつけば良いが、こじれた場合には双方国内の第3者の仲裁機関か、国際機関が仲裁に入る。 南北間においても、取引上の紛争を解決するための手続きや手段などの道筋について協議される。 南北間では、どの方法で支払いをするか、まだ明確でないが、一定期間(通常は1年)分をまとめて決済する「相殺決済」方式の導入が検討されている。 |