グローバル新風

シリコンバレー探訪


 先日、初めてシリコンバレーを訪れた。

 アメリカはおろか、世界をリードするハイテク集積地でもあり、そこかしこに先端的な物体が多い街かと思えば、そこは緑豊かで静かな所だった。マイクロソフト、アップル、アドビなど世界的企業が立ち並んではいるが、目に見えないソフトパワーを生む産業だけに、重工業集積地の巨大な工場や煙突のような、象徴的なものはなかった。

 それより、「IT革命」などという刺激的な雰囲気は微塵も感じさせない、乾いた空気と緑の木々に囲まれ、まぶしい陽光が降り注ぐ環境が印象に残った。

 IT企業には貴重な人材を優遇するため、高級ホテルのような施設を有するところもあると聞く。筆者が昼食時におじゃました、シスコシステムズの社員食堂にも、上等な食べ物が並ぶビュッフェがあった。

 魅力的な環境は一部の大企業だけではない。

 近くにはハーバードと並び称されるスタンフォード大があるが、ロマネスク調の荘厳な建造物が醸し出す雰囲気は、知識欲をかき立てる。ここから巣立った大勢の優秀な人材が、シリコンバレーを形成してきたという。

 何度も道に迷い、片言英語で道を尋ねる筆者に、人種、職業とも様々な人々がみな、親切に応じてくれた。しばらく言葉を交わしたコリアンのベンチャー企業社員は、実直かつ温厚な人柄を思わせた。

 環境と発想の関係について、詳しくは知らない。ただ米国滞在中、シリコンバレーで人の親切に多く触れたことから、電子の世界で起きている大変化も、生身の人間から発していることを実感した。
(李達英=朝・日輸出入商社)

日本語版TOPページ

 

会談の関連記事