ことわざ辞典

髪を切ってはきものを作る


 「髪を切ってはきものを作る(モリトル ペヨ シンバル サヌンダ)」

 どんな事をしてでも、忘れずに恩に報いるとの意味。

 昔、ある貧しい家に母と娘が暮らしていた。やさしい気立てのいい娘であった。 ある雨の日、娘が台所で釜のご飯を移し替えていると、どこかから、いっぴきのひきがえるが目をパチクリさせながら、のそのそと入ってきた。娘はそれが可哀そうにみえて、ひきがえるに自分のご飯を食器から取って与えた。それからひきがえるは、娘とすっかり仲良くなって帰ろうともしなかった。

 ひきがえるは日1日と大きくなった。1年以上もそんなふうにして暮らしている間に、ひきがえるはついに犬くらいの大きさになった。ひきがえるが大きくなるにしたがって、娘の食べる分は減っていくが、娘はいやな顔1つせず、ひきがえるを養っていた。

 その村には大蛇がいっぴきいて、村の人々は、みな害を受けながら暮らしていた。畑は荒れていき、牛馬も奪い去られただけでなく、これまで娘が大蛇に命を奪われそうになったことも1度や2度ではなかった。大蛇のすみ家は、村からやや離れた岩山のほら穴である。

 弓を射る若者、鉄砲の上手な人らが、そのほら穴にそれぞれかわりばんこに行っては、大蛇を殺してしまおうと頑張ったが、誰も成功しなかった。それで村人たちは災難を防ぐため、毎年少女を1人犠牲にして大蛇にささげてきた。ちょうどその年の犠牲者として選ばれたのが、ひきがえるを養っていた娘である。

 ついに、娘は大蛇の穴の前にひき出された。大蛇が娘を呑もうとほら穴から出てきたとき、娘は恐ろしさのあまり、気を失って倒れてしまった。そのときである。一筋の白い毒が大蛇に向かってあびせられた。

  それは娘と仲良しのひきがえるの毒であった。娘を守ろうとしたのである。大蛇も負けずに毒気を吐き返した。すさまじい戦いが展開されるうちに、大蛇の口から吐きだされる毒気は次第に弱くなって行った。いつのまにか、大蛇は息が絶えて死んでしまった。と、同時にひきがえるも疲れ切ってその場に倒れてしまった。ひきがえるの犠牲によって、危険な状態から脱することができた娘は、死んだひきがえるを背負って家へ帰り、亡骸をていねいに埋めてやったという。 (この項はおわり)

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