20代・女性記者が見た「南北」、「日朝」

在朝日本人女性たちの故郷訪問

「民族蔑視」が生んだ肉親への「拒絶」


 8月12日から18日の1週間、在朝日本人女性(随行員3名、日本人女性16名の計19名)の第3回故郷訪問が2年7ヵ月ぶりに実現された。

 在朝日本人女性の故郷訪問はある意味で、日本人の「離散家族再会」だと言える。

 40年もの歳月、海を隔ててすぐ隣の国に住みながら家族が自由に行き来したり、連絡をとりあうことはほとんどできなかった。そのような親族がいることを胸の中に封印して生きてきた人生だった。家族が何十年間も会えない、これが「離散家族」でなく何だろう。

 今回、訪問団の平均年齢は67歳、最高齢は76歳。彼女たちのほとんどが40年ぶりにふるさとの地を踏む。「朝鮮に渡った時は、しわなんか1本もなかったのに」と感慨深げに語るある女性は現在2人の兄と妹、そして1人の弟が関東地方で暮らす。

 日本赤十字社によると、日本にいる親族全員には前もって訪問団の知らせを送るという。しかしほぼ100%が面会を拒絶。「なかなか受け入れてもらえないのが現状」である。

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 取材に先駆け筆者の頭の中には8月の「南北朝鮮離散家族」の再会が思い出された。家族を思う懐かしさと、会うことのできない苦しさを全て胸の奥に秘め、半世紀もの歳月をただひたすら待ち続けた人たち。その解き放たれた瞬間の喜び、涙、涙の再会。街角を歩く人たちも駅で電車を待つ人もみんなが立ち止まり、テレビの前で泣いていた、あのシーン。今でも胸が熱くなるようである。

 しかし、どういう訳だか今度の「離散家族」は勝手が違うようだ。
 飛行場で、40年ぶりに帰ってきた彼女たちを待っていたのは取材陣の群れ。2、3人の友人の姿は見受けられたが家族や親戚の姿は誰1人、探す事ができなかった。

 「北朝鮮に帰った兄弟がいるというだけで、私の兄は職を失い、妹は離婚寸前までいった。家族がばらばらになりましたよ…」と語るある女性は、今回5人いる兄妹のうち誰1人として家に受け入れてはくれなかった。それでも彼女は日本に住む兄妹に迷惑がかからないようにと、面会もせず、家を訪ねることもなくひっそりと故郷をあとにした。「私さえ我慢すればいい事だから…」と。

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 私が見た南北離散家族の再会と在朝日本人女性の故郷訪問は、あまりにも対照的であった。半世紀にわたる家族への思いや心のわだかまりを解くための旅が、逆に深い傷を生み、新たな「悲劇」を生んでしまったのだ。だからといって家族を恨む者など誰1人としていないであろう。

 問題はそんなことより、「朝鮮と日本が真に近くて近い国になっていない所にある」のだ。

 彼女たちが最後まで訴えていた心の叫びはまさしくそこにあるに違いない。

 「今度いつまた来られるのだろうか」。彼女たちは異口同音にこう語る。こんな心配をいつまでしなくてはならないのか。

 日本人の心の奥底に宿る朝鮮に対する「敵視感情」や「民族蔑視」の恐ろしさを生々しく見せつけられたような気がする。そしてこのような考えはせっかく訪ねてきた肉親までも「拒絶」する悲しい現実を生んでしまったのである。

 彼女たちの願う「近くて近い国」が国交と同時に心の隙間をも埋めてくれるような関係になってもらいたい。そして近い将来、必ず日本のメディアに在朝日本人女性たちのあふれんばかりの笑顔と喜びが映し出されることを願う。(李文喜記者)

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