それぞれの四季

感傷にひたる秋

全佳姫


 毎年、秋が来ると、少し感傷的な気分になります。季節の移ろいがそうさせるのでしょうか。否、そればかりでなく、秋は大好きだった母方の祖母が、遠い世界へ旅立った季節だからだと思う。秋の夜長、眠れぬ夜には決まってハンメが心の中に浮かんでくる。お正月や旅行など、一族が集まる場では、いつもハンメが輪の中心だった。運動会には必ず豪華なお弁当を作り、駆け付けてくれたっけ。そのおかずの美味しいこと!

 中でもハンメがふかした栗の甘さは、今でも口の中に広がるよう…。
 次から次へと浮かんでは消えていくハンメの思い出は、どれもみな、きらめくように楽しいものばかり。そう、ハンメは孫である私たちに楽しい思い出だけを数え切れないほど残してくれた。もしかしたら、楽しい思い出を作ることで、過去の悲しい思い出や辛さを打ち消そうとしていたのかも知れない。

 私がハンメの重い過去を知ったのは、ハンメが亡くなった後だった。お葬式を終えた後、それまで幼い頃の話を一切しなかったオモニが、ぽつりぽつりとハンメの歩んだ人生を語ってくれたのだ。渡日後、差別と屈辱の中で幼い子供たちを必死に守り、育てたハンメの生涯。オモニから聞く話は、あの大きな声で笑い話すハンメからはみじんも想像できぬほど、壮絶で悲しい女の人生だった。

 「また、大っきいハンメのとこ、行こうね」

 お墓参りの帰途、2歳半の娘は無邪気に私に笑いかけた。いつの日にか、この子にも大きいハンメの波乱に満ちた人生を、話して聞かそうと思っている。 (事務員)

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