東京・豊島、板橋、練馬
3地域商工会の取り組み
商工人の便宜図り共同作業
経営セミナー、税務相談…専門分野に分担し対応
専従少なく活動限界→連携・協力 「活気づく」「安心して相談」と好評 東京都商工会に属する豊島、板橋、練馬の3地域商工会では、同胞商工人の経済的便宜を図り、組織を活性化させる一環として、様々な行事を共同で催している。これまでに「同胞生活相談の日」や税務相談会、確定申告相談会などを行い、先月末にも中小企業を営む商工人を対象にした経営セミナーを催した。それぞれ専従役員が少ないため、一単位での活動に限界があるという事情から始めたものだが、地元の商工人からは「隣接する他地域の商工人との交流が深まる」「共同行事だと役員が多いので、何でも安心して相談できる」など、評判は上々だ。 東京23区内の西北部に隣接する3区は、いずれも東京朝鮮第3初級学校の学区内にあり、父兄同士のつながりはある。だが、商工会同士の付き合いはそれほど深くはなかった。 連携の大きな理由は、専従役員が少なく、商工人の便宜を図るのに限界が生じてきたことにある。 専従役員は、豊島が2人、板橋と練馬は1人ずつ。もともと地域に商工人の数は多くない。それでも、「地域全体を把握し、集まりに勧誘したり、相談に応じるには厳しい」(豊島商工会の徐英男理事長)という。 不況下で、商工人からは資金調達に関する相談が圧倒的に多いというが、知識不足や経験不足もあって、1人や2人ではサポートしきれないのが現状だ。 「商工人の経営上の悩みを解決するのに、商工会の力量が追いつかない状態が続いてきた。これでは商工会から人がどんどん離れていってしまう。これは何とかしないと、と考えたんです」(徐理事長) そこで、同じ悩みを抱えていた板橋と練馬の両商工会と、連携の方向で話し合い、話がまとまった。 申告サポート 商工人からは、資金調達のための各種融資・助成制度の利用方法や、起業に伴うアドバイスなど、経営上の様々な質問が出たといい、「今までは、この手のセミナーに参加しても人数が少なく寂しかった。3地域合同なら、他地域の人も集まって活気づく」との意見が圧倒的に多かった。 そこで、今後は3地域が合同で動いていくことで、常任理事会で決定。昨年末から本格始動した。 現在、2月に1度のペースで役員が合同で集まって意見を交換している。行事ではこれまでに、商工人の「確定申告」をサポートする活動として、有資格者による税務相談会や、申告の際の相談事業を行ってきた。 先月30日には、池袋の豊島区立生活産業プラザで経営セミナーを開き、中小企業の経営相談を行っている祝経営研究所の岩井義照所長が講演。不況下で倒産を防ぎ、無借金経営を目指すためのアドバイスとして、「融資の担保にした不動産物件などの資産は捨てる覚悟でいること」「担保に入れてない資産は、名義を家族と共有するなどの手法で守ることができる」など、具体的に指摘した。 共同活動のメリットについて、各商工会では「3人寄れば文珠の知恵」のことわざを引き合いに出す。 練馬商工会の林淳基総務部長は「1人ではどうしても手が回らない時がある。複数の専門家が集まることで、より専門的な要求にも力を合わせて対応できるのがメリット」と語る。 「互いの知識を共有することで、足りない部分を補うことができ、それだけ同胞にも正確なアドバイスを与えられる。経済・経営の専門集団としては理想的な形では」(板橋商工会の李孝允総務部長)というのが、一致した意見だ。 また、同胞商工人に与える「安心感」も大きいようだ。 ある商工人は、地域の経営セミナーになかなか顔を出さなかった。どうせ集まらないからと、行きたがらなかったという。ところが、合同セミナーの話を聞き、参加したところ、参加者の多さに驚いたという。 「1つの商工会で呼んでも来ない商工人が、合同行事には来てくれるケースも多い。商工人のほとんどが、共同行事が良いといってくれている」(徐理事長)。「商工会に顔を出す気にさせる」意味でも、意義は大きいようだ。 今後は、経理事業を共同で行うなどの構想を持っているという。当面は、年末融資のあっせんや「確定申告」の準備に追われる日々が続く。(柳成根記者) |