在日と南の合弁IT企業
「ユニコテック」設立

民族経済活性化の起爆剤 

音声認識・翻訳にも挑戦
実現すれば強力な武器に 


記者会見するユ・ワンニョン会長(左)と梁泳富社長


 「情報技術(IT)で、東アジアに言葉の壁を打ち破るデジタルネットワークを」――。朝鮮半島を取り巻く情勢が大きく動くなか、在日同胞企業と南朝鮮企業の合弁会社、ユニコテック(ユ・ワンニョン会長、梁泳富社長)が5日、旗揚げした。今後、自動通訳技術の開発に本格的に着手するとしており、日本を拠点にした初の「南北ITベンチャー」への期待が高まっている。

時代をリード

 「ナヌン  イルボネソ  ワッスムニダ」と、朝鮮語でマイクに吹き込む、技術担当の朴成律PC事業部長。すると、その文字が画面にすかさず表れ、対訳された「私は日本から来ました」という日本語が、機械合成された「声」で発せられる。「まだ開発事業の開発段階」(同部長)ということで、音声認識の正確さには欠けるものの、音声認識自動翻訳という未開拓の分野への果敢な挑戦に、セミナー会場では大きな歓声と拍手がわいた。

 同社の軸は、同胞にはおなじみの朝鮮語入力システム「ウィンク」シリーズを開発した、同胞企業CGS(梁社長)と、南のパソコンモニター製造企業IMRI(兪社長)。そこに、インターネット広告サービスを手掛ける南のIMNET21、携帯情報端末(PDA)にコンテンツ(情報)を提供する同胞企業ROIDが加わった。

 同社は、ソフト開発技術には定評のある、平壌の朝鮮コンピュータセンターと技術提携する。会見では、「4社ががっちり組んで、東アジアで最高のデジタル技術会社になりたい」(兪会長)、「南北経済協力が多角的に進むなか、初の北・南・在日同胞の合弁は画期的なこと。互いの専門分野を最大限に生かし、時代をリードする最先端企業を目指す」(梁社長)と勇ましい発言が飛び交った。

ウィンク人気

 日本には、本格的な朝鮮語ワープロソフトはそう多くない。北と南の文法や表現の微妙な違いを追求すると、やはり「本場」のソフトを使わざるを得ないのが現状だ。そんななか、CGSが4年前に発表したウィンクは、またたく間に同胞の間で人気を博した。

 会見では、2年の歳月を経て開発したマルチランゲージ(多国語)ソフト「すらすらシリーズ」が発表されたが、中でも目を引いたのが、ウィンクの改良版「すらすらハングル入力」だ。「同胞の朝鮮語ワープロへの需要は高い」(朴部長)だけに、マッキントッシュとウィンドウズMe対応、朝鮮語全文字表示で外来語にも対応と、使い勝手にはこだわりが見える。

 周囲の期待も大きい。同胞ソフト開発企業「コスモソフト」の柳革烈代表は、「朝鮮半島情勢がこれだけ良くなったから実現したもの。統一への流れにも拍車がかかる。大したものだ」と、喜びを隠さない。

 また、日本テレコム営業本部営業第4部の福島重利課長は、「携帯電話やPDAは今後、次世代へと移っていく。翻訳システムを作るのは技術的に十分可能。実現すれば、またとない『武器』になる」と語る。

 日本と南が共催する2002年サッカーワールドカップを念頭に、パソコンやPDAを通じた自動通訳技術の開発を進める同社。「東アジア経済発展のモデルケース、朝鮮の民族経済活性化の起爆剤になる」とは、朴三圭IMRI顧問の話だ。好転する情勢を追い風に、新進気鋭の「民族ベンチャー」は、第1歩を踏み出した。 (柳成根記者)

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