在日同胞の「特別地位保証」とは
任京河
日本人に準ずる処遇
再入国の自由/退去強制から除外
登録上の国籍表示統一
共和国国籍法の認定
朝鮮民主主義人民共和国が、朝・日交渉で求めた在日朝鮮人に対する従来の法的地位ではない「特別地位保障」とは、つまるところ、在日朝鮮人の尊厳と生活に関わる様々な法的権利を保障することを意 基礎となる3つの視点からこの権利保障に触れてみたい。 第1に、在日朝鮮人は国際法上、正当に保護されるべき外国人であるということだ(在日朝鮮人の人権を守る会編「在日朝鮮人の基本的人権」1ページ)。 在日朝鮮人は、国際人権規約をはじめとする国際法により、また日本国憲法により、基本的人権を保障され、他国内においても正当に処遇されるべき権利を有する独立国家の公民である。 この点から、在日朝鮮人は国交の有無に関わらず、外国人と内国人を区別することなく個人の人権の保障を命ずる国際法規の発展に相応しい処遇を受ける権利を持っており、日本政府にはそれを保障する義務がある。 ところが、日本政府は、共和国政府を公式には承認していないという形式論を建前に、在日朝鮮人の人権をあらゆる場面で侵害してきた。 在日朝鮮人への共和国国籍法の適用を一貫して否認し続け、共和国国籍保有を根拠に日本国籍を離脱する自由を奪ってきた。また、両国の関係悪化によって「制裁」として共和国への渡航の自由を阻み、資産凍結を公言して財産権を脅かしたことは記憶に新しい。 国交がないことを口実にこれらの人権侵害が正当化されてきたとするなら、この問題は今後、朝・日間の条約上で解決するまでもなく、国交樹立によって当然に解消されるものと論理的には言えるかもしれない。 しかし、国籍問題は、朝鮮人が植民地時代に強制された日本国籍からいつ解放されたのか、1965年の「韓日条約」をはじめ条約上は明言されていない。在日朝鮮人の「特別地位」は、国交正常化後であっても、いかなる国際情勢の変化にも影響されず、国家関係とは別次元で恒久的に保障されるべきことが条約の精神となるべきであろう。 第2に在日朝鮮人は、日本の植民地支配の犠牲者であり、特殊な歴史的事情をもっていることである(前掲書、2ページ)。 植民地収奪政策によって渡航を余儀なくされ、あるいは強制連行されてきた歴史的事実からすれば、外国人一般として処遇するのではなく、むしろ内国人たる日本人に準ずる権利保障が為されるべきでだ。 具体的には、日本人と同じレベルで在留権が認められ、民族的尊厳を持って生きるために必要な民族教育を受ける権利が保障されなければならない。 現在、在留権については、「日本との平和条約に基づき国籍を離脱した者などの出入国管理に関する特例法」(特例法)によって、子孫にいたるまで特別永住者としての法的地位が認められているが、再入国許可や退去強制事由、対象者の範囲などの点で不充分であると言わざるを得ない。 再入国許可については現行法上の、許可制、最長5年、手数料(6000円、3000円)、許可を得ずに出国しまたは有効期限内に再入国しなかった場合の永住権の失効など、諸制度を改め、再入国の自由が完全に保障されるべきである。 また、特別永住者は、退去強制条項の適用対象から除外されるべきである。特別永住権の対象についても、戦後一時帰国したことなどから一般永住者となっている者や1歩進んで特別永住者の配偶者にも範囲を拡大することが必要である。 21世紀に及んでもなお、在日朝鮮人が家族離散の辛酸をなめることのないよう人道的見地から切に望むものである。 差別的扱いで分断を固定化 第3に在日朝鮮人は、近未来統一国家の在外公民として処遇されなければならない。 「韓日条約」は、分断状態にある朝鮮半島において「韓国」政府のみを唯一合法政府と確認し(同条約第3条)、外国人登録上の「韓国籍」者にだけ永住権を与え「朝鮮籍」者を除外する差別的扱いをすることによって、南北の分断を固定化させただけでなく、在日朝鮮人の中にまで持ち込むという、非難されるべき条約であった。 こんにち、在日朝鮮人が「朝鮮籍」者と、「韓国籍」者に別れている根源はここにある。 「特別地位」は、過去の教訓と今年6月15日の「南北共同宣言」の精神に鑑み、在日朝鮮人を国籍いかんに関わらず等しく統一国家の在外公民としてとらえ、すべての旧朝鮮半島出身者とその子孫に保障されるべきである。そのためにも日本政府は、在日朝鮮人の外国人登録上の国籍表示を元来の「朝鮮」にするか、またはほかの表記に統一すべきである。 朝・日関係が、21世紀にあるべき平和的普遍的国家関係たるためにも、先例にとらわれない積極的措置が必要であると考える。(イム・ギョンファ=朝鮮大学校専任講師) |