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パブロ・ピカソ(1881〜1973年)が幼い頃、自転車のサドルとハンドルを組み合わせて、「牛の顔」を作った。サドルとハンドルをそれぞれ逆さまにして、サドルの前の部分が牛の顎、ハンドルの握りの部分が角である。本でその写真を見て、思わずウーンとうなってしまった
▼なんの変哲もない自転車で、牛の顔を作ることなど、およそ凡人には考えつかない。が、ピカソは、頭の中で自転車をばらばらに分解し、その一つひとつの部品が持つ本質を見抜いて、自分が望むものを作り上げたのだ。これまた、凡人には成せぬ技だ ▼12日に発表された朝米共同コミュニケについて、一部ではあるが、「90%が儀礼的で象徴的であり、オルブライト長官の訪朝以外は具体的なものがまったくなく、言葉の羅列に過ぎない」(ジェイムス・リリー元駐韓米大使)と言った声がある。リリー元大使は一時期、朝鮮半島問題に深く関わっていた ▼なにも分かってなくて的外れなことを指摘する「評論家」と、状況を理解していても、なおかつ反対意見を述べる専門家とがいる。リリー元大使は、朝米共同コミュニケ作成に参画できなかったことが、前述の発言となって現れたのではないだろうか ▼南北共同声明、朝米共同コミュニケの発表によって、朝鮮半島情勢は根本的な変化を遂げようとしている。そして、その変化によって利益を得る者、失う者がいる。「牛の顔」ではないが、1つの物事には様々な「顔」が潜んでいるのだ。南北和解、朝米緊張緩和の受益者はもちろんわれわれ同胞である。(元) |