在日同胞の「特別地位保障とは」
呉民学
経済的損失への補償
恒久・時限的、特恵的な措置を
先進国のケースからも立ち遅れ
在日朝鮮人を経済行為者とした場合、日本で居住しながら本国の権利義務を有し、経済活動をする海外公民としての外国人、または永住資格を持つ居住者、居住法人としての外国人という2つの側面がある。 タイのように国内法で「外国人企業規制法」を定め、タイ国内の事業活動で外国人の参加の範囲を規制、抑制する国もあるが、経済のグローバリゼーションにより、一部の重要産業を除き外国人企業家に そこで問題となるのが、朝鮮民主主義人民共和国と日本との間で国交が結ばれても日本では現在、朝鮮国籍(当局は現在符号と言う認識である)を持つ企業経営者に対しては、@国益A国の再生産構造の根幹B治安に関わる分野以外では、他の外国人と同等の権利を与えているし、日本国民と比べて何ら経済的差別はないので、特別な施策は論外と言う主張があるが、果たしてどうだろうか。 結論から言うと、国交正常化と同時に在日朝鮮人には、第1に過去の植民地及び当局者の人為的差別による経済的損失に対する補償がなされるべきであり、第2に恒久、時限的に特恵的な経済活動上の地位と、差別からの法制的保護を受けるべきであろう。 @在日朝鮮人は本来の自由移民ではなく強制連行者または、植民地支配による生存圏の喪失による半強制的な渡航者、またはその子孫であり過去の清算はいまだなされていない。 A解放後、納税義務を果たしてきたが、制度的な所得再分配における差別を引き続き受けている。 周知のように日本で「出入国管理及び難民認定法」(1981年)が制定される以前は、国民金融公庫等の制度的支援を受けることが出来なかったし、郵便貯金の原資が資金運用部資金として制度融資に活用されていることを考えると、重ねてそれまでの機会損失額は補償されるべきであろう。 B共和国に対する差別政策により、在日朝鮮人は本国との貿易上多大な不利益を被った。 朝鮮民主主義人民共和国がUNCTAD(国連貿易開発会議)に加盟しているにもかかわらず、関税は基本税率(一般的に特恵税率―協定税率―基本税率と順に高くなる)が適用されているため、多くの在日朝鮮人による共和国との合弁企業は長年「差別コスト」を課せられたし、原産地規則により共和国の一部の貿易商品は迂回させられ、貿易コストを吊り上げられた。 C過去、幾度となく「朝鮮籍」企業主らは「財産権」など既得権を脅かされてきたし、当局の朝鮮への敵視による民間への差別転化が起こり、企業活動は複合的な差別的損失を被った。(民間金融機関の融資審査におけるいわゆる「危険割増」、不動産取得、店舗開設時の入居差別など) 在日朝鮮人が被ったこれらの損失は国際法上の「現状回復」を考えた場合、経済学的に「機会費用」まで加味した保障になるべきであろう。 とくに強調したいのは、中国、台湾などの過去の事例にとらわれない特別な措置として考えられなければならないということだ。 内容として、幾つかあげると次の通りになる。 @現行経済関連法上に残っている「差別的な国籍要件」を撤廃させるべきである。 改正された外国為替法上にも残っている、いわゆる「経済制裁の国際的要請」による、朝鮮ならびに「朝鮮籍」企業主に対する信用取引などの差別をなくす措置を取ったり、そうした努力をすべきだということだ。 A過去の経済損失に見合う時限的な特別措置を取るべきである。 制度融資等の公的制度はもちろん、民間レベルの差別再発防止措置も合わせて取るべきだし、また、不当に没収された民族学校等施設の保障と合わせて民族教育に対する企業支援金を損金扱いにすべきである。 B歴史的な特殊性を考慮し、朝鮮民主主義人民共和国と在日朝鮮人の貿易、投資に関し、朝鮮には最恵国待遇、在日朝鮮人には時限的に特別措置を取るべきである(在日朝鮮人の本国投資に関する時限的投資免税、先端技術の輸出規制の撤廃など)。 そのほかにも経済活動上の問題は多数存在し、また2国間通商条約など、解決チャンネルも多岐に及ぶ。 しかし一番大切なのは、過去の歴史認識に基づく信頼関係の構築と、グローバルな経済社会にマッチした民族性の尊重、経済的共生、相乗的発展の新たな歴史をともに創造していくことではなかろうか。 |