取材ノート

9年前、削除された「北朝鮮」を除く


 日本人の旅券から長年「北朝鮮を除くすべての国に有効」(英文表記)と記載された事項が削除されたのは、今から9年前のことだ。

 90年の「3党共同宣言」に明記された項目の1つが履行されたもので、翌年91年4月1日から実施された。

 当時、この記載に対する日本政府の言い分は、「国交がないのでトラブルの際、邦人保護の手段が取りにくい」ということだった。

 だが、「国交がないから…」と言うのであれば、それは違う。他の国交がない国、もしくは他の分断国家に対して同じようには扱っていない。

 この2行は要するに、地球上にある国のなかで、唯一朝鮮民主主義人民共和国という国家の存在自体を認めないとする、共和国に対し一貫して取ってきた日本の差別政策を明確に示したものだ。

 当時、ほとんど訪朝する人などいなかった米国人の旅券にさえ、そんなあからさまな表現の明記はなかった。

 結局その2行は、共和国側の再三の要求や、日本側の体裁の悪さなどを考え、当時始まっていた国交正常化交渉で口実になるなど諸々の状況を判断して削除に追い込まれた。

 旅券からのあからさまな表現は消えたが、あれから日本の対朝鮮政策は何が変わったと言えるだろう。

 いまだに植民地時代の謝罪はおろか、在日同胞に対して、解放後55年間、差別政策をとっていることに変わりはない。それを表している1つが、南一辺倒をいまだに貫き、在日同胞への共和国国籍法の適用を一貫して認めていないことだ。

 両国の国交正常化はもちろん、解放後の在日同胞への謝罪と補償、この年数がこれ以上増えないことを望みたい。(金美嶺記者)

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