大阪・平野にオープン
「ケアステーション 介護の森」

地域、1世に恩返ししたい 

ビジネス追求しつつも
同胞の1割負担免除めざす


 多くの在日同胞が暮らす大阪に、同胞による介護支援センター「ケアステーション 介護の森」(大阪市平野区)が10月28日、オープンした。「同胞社会を築き上げた1世への恩返しと、地域の同胞社会への貢献」を経営理念に掲げるのは、弱冠歳の崔善貴専務。ボランティアとビジネスの両立に悩みながらも、総聯支部とのタイアップのもと、地域に根差した介護福祉を目指す。

管下に同胞1万人

 平野区、東住吉区、阿倍野区、八尾市竹渕(たこち)の四地域を網羅する総聯大阪・東阿支部管下には、約1万人の同胞が暮らしている。
 だが、生野区など大阪市内の他の地域と比べると、地域に同胞が運営する介護支援センターはなく、言葉の壁などコミュニケーション上の問題を抱える1世同胞に対する、地域密着型の介護サポートが急務となっていた。

 介護事業部長を兼任する、実質的な経営者の崔専務は、共和病院(大阪市生野区)の元理事長で祖父の金石岩「介護の森」会長のそばで、幼い頃から同胞福祉・医療現場と接触する機会が多く、関心が強かったという。

 朝鮮大学校外国語学部を卒業後、同胞に真に貢献できる仕事を模索するなか、1つの結論としてたどり着いたのが、「介護保険制度の導入を機に、必ず伸びるであろう」(崔専務)、介護ビジネスだった。

 とはいえ、この分野ではまったくの素人。介護事業に携わる知人のもとでの修行や、行政担当者へのあいさつ周りなど、準備期間はとにかく多忙だったそうだが、大阪府指定業者の認定も得て、ようやく「事務所開き」にこぎつけた。

 「安心とやすらぎを与えられる場所になりたい」との思いを込め、名前は「介護の森」に決めた。

「心のケア」に重点

 事務所開き当日、事務所には地元選出の府・市議会議員や福祉関係者、多くの同胞が集い、センターの船出を祝った。父の崔亨達社長らスタッフとともに紹介された崔専務は、「不安もあるが、周りの助けも借りながら、同胞のためのセンターを目指したい」と、抱負を語った。

 民主・民友大阪市会議員団幹事長の松田力・大阪市議会議員は、若い崔専務の心意気を買いたいと語る。「介護サービスを受ける側が、心から幸せになれるようにするのが最も大切。在日高齢者の『心のケア』という点において、同じ在日による事業所は心強いだろう。行政的にも積極的にバックアップすべきです」

 総聯東阿支部の金永忠委員長によると、今回の開設の知らせに、地元の同胞からは「地域の同胞高齢者をしっかりとサポートしてほしい」「行政と同胞のつなぎ役に」など激励の声が多く寄せられたという。

 ただ、崔専務には1つ、悩みがある。ボランティア色が濃い介護福祉事業における、営利との兼ね合い。「この業態ではある程度、採算を度外視する勇断も必要」(松田市議)だが、職員を雇う以上、利益は追求せざるを得ない。

 「介護サービスの1割負担も、65歳以上の保険料納付も、生活の苦しい同胞高齢者には相当な負担。せめて、この1割負担をうちで負う形で免除できるのが、理想的なんです」(崔さん)

 地域貢献と営利追求。ビジネスの難しさを、経営者になって初めて実感したというのが、崔専務の率直な心境のようだ。「まあ、うちはまだ駆け出し。長い目で見てください」

総聯とタイアップ

 同センターでは、介護サービスを受ける際の相談から、市区町村への要介護認定作業の申請、それを踏まえてのケアプランの作成、サービス利用開始までを一手に引き受ける。また、福祉用具のレンタルや、各種施設の紹介なども行う。

 明日7日、東阿支部では、同胞生活相談綜合センターを旗揚げする。「介護の森」は、センターの事業の1つである介護福祉分野を担当する形でタイアップを図る。また、地元の大阪市職員組合平野区役所支部が行政の窓口として協力する。「同胞に心から信頼され、感謝される場所にしたい」と、崔専務は意気盛んだ。

 「孫に、同胞介護の未来を託したい」

  崔専務を見つめる金会長のまなざしは、次世代の同胞社会への期待感の表れでもある。(柳成根記者)

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 介護の森 大阪市平野区平野本町2−10−18 田口ビル2階(市営地下鉄谷町線平野駅四番出口下車、徒歩1分)рO6・4303・6600、HP=http://www.links21.co.jp

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