春・夏・秋・冬

 「人は、高くそびえるものや信念をもって真っすぐ進むものへの憧れと畏敬(いけい)の念を抱き、彼(彼女)から生きるための大切な要素を汲み取りながら努力を傾けるはずだ」

▼20代のはじめ、李泳禧氏(漢陽大学名誉教授)が書いた「偶像と理性」という本に出会った時、著者のような生き方をしたいと思ったことが思い起こされる。それ以来、李氏の書物を読みあさり、多くのことを教えられた

▼先日、その著者と会った。李氏の著書の日本語版監訳者・徐勝氏(立命館大学教授)を介しての取材だった。李氏はジャーナリストとしてのたぐいまれな筆力で、軍事独裁政権の恐怖支配の本質を突き、民族分断の条件と状況を克服する論陣をはってきた。家族離散の生々しい体験をしてきたからか、文章の一字一句からは分断時代を生きる同胞の痛みと身悶えを感じることができる。「社会科学的リアリティーと温かい人間性が流れている」(山田昭次氏・歴史学者)

▼李氏と同様に、シャープな切り口で「日本を問い」続けている人に鄭敬謨氏がいる。李氏の出版記念会で11年ぶりに再会した鄭氏は「いつ死んでも悔いはないと思っていたが、最近の情勢を見てもう少し長生きしたいという欲が出た。共に頑張りましょう」と、李氏に語りかけていた

▼和やかに会話をする「知の巨人」の話を聞こうとジャーナリストや学者らがその回りに集まる。そんな光景を見ながら、彼らのまねごとのようなことはできなくても、少しは近づけるように、「死に物狂い」の努力をしなければと強く思った。(舜)

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