「アルコールハラスメント」

酒による嫌がらせの実態、克明に報告

イッキ飲み防止連絡協が発行


 酒のイッキ飲みで子供を失った親によって1992年に作られた市民団体「イッキ飲み防止連絡協議会」は、93年から毎年春にキャンペーンを開催し、その危険性等について様々な形で情報を発信してきた。しかし、イッキ飲みはいっこうになくなる気配はなく、事故も相次いでいる。

 こうした実情を踏まえて協議会は、「イッキの防止にはアルコール・ハラスメント(アルハラ)という大きな概念からの取組みが必要」と判断。その手始めとして今年4〜5月にかけて「アルハラ110番」を設置し、広く一般から該当ケースを通報してもらった。ここに寄せられた182の事例の分析と生の声を集めたのが本書である。

 同協議会では、アルハラを「酒にまつわるいやがらせ・人権侵害」と定義し、@飲酒の強要Aイッキ飲ませB酔いつぶしC飲めない人への配慮を欠くことD酔ったうえでの迷惑行為――などがこれにあたるとする。

 パート1には、アルハラの実例が掲載されている。

 「コンパで1人がイッキ飲みをしたら場が盛り上がり、『お前もやれ』と次を指名、どんどん続いた。複数名が急性アルコール中毒で倒れ、救急車で運ばれた。うち1名が死亡」(学生)、「会社より1年の海外留学派遣が決まり、その壮行会で、次々とお祝いの乾杯(主にウィスキー)を受けて倒れ、3時間ほどで死亡」(社会人)など、死に至ったケースも。

 また、上司から「酒を飲むのも仕事のうち、行かないのは仕事ができないのと同じ」などと言われたり、酒席を断ったことで人間関係がぎくしゃくし、会社をやめたケースまで。仕事上の嫌がらせに発展するケースなど、社会的・精神的被害も多く報告されている。

 パート2には予防ガイドライン、パート3には被害にあった遺族の手記、パート4には関連資料を掲載。

 本書では、@組織ぐるみの飲酒の強要を絶対に許さないAアルハラは生命にかかわることを知らせるB「固定概念」を打破し、正しい認識を普及するC飲めない人に配慮するD未成年者には飲ませないE「主催者・幹事の責任」を明確にする――をアルハラ防止対策の六つのポイントとして提起している。

 定価=1200円+税。問い合わせ、購入は東京事務局(рO3・3249・2551、ファクス03・3249・2553)まで。

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