強盛大国 金正日プランー5−

農業政策

農業構造改革に取り組む
土地整理、二毛作 国連バックアップ


 朝鮮で深刻な食糧難が始まったのは、1995年からだ。94年にひょうの被害、95〜97年に水害、98年以降は毎年旱ばつに襲われた。

 旧ソ連・東欧の崩壊で、社会主義市場が消滅し、貿易相手の70%を失ったところに、自然災害が追い討ちをかけ、経済全般、農業が大きな打撃を受けた。

 食糧事情の悪化によって、95年から毎年130万トン以上、多い年は193万トンの穀物輸入が必要となった。

自然災害乗り越え

 停滞をたどった農業に好転の兆しが見え始めたのは99年。経済に全責任を持つ内閣の機関紙民主朝鮮が「豊年」(10月8日付)を伝えた。改善の兆しが見え始めた要因は、農業復興を最優先課題として取り組んできた朝鮮政府の努力と、国連機関をはじめとする国際社会の支援にあった。

 朝鮮政府が取り組んだ食糧増産の対策は@土地整理事業の推進と農業の総合的機械化の完成A二毛作の推進と品種改良B草食家畜の育成と養魚事業の展開C農民の労働意欲をかき立てる分組管理制の導入(生産計画の超過達成分の処分権を分組に与える措置)――などだった。

 国土の80%以上が山林地域の朝鮮にとって、耕地面積の拡大は食糧増産のための切実な課題となる。

 まず、土地整理だが、最も立ち遅れていた江原道から着手、完成させ、昨年度は前年比2・5倍の穀物を増産した。続いて昨秋から土地整理を始めた平安北道では5月現在、5万ヘクタールの土地が整理された。

 今年1月、平安北道の土地整理を現地指導した金正日総書記は、10年、50年後を見据えてこの事業を進めていかなければならないと指摘。将来、経済事情が好転すれば、農業の総合的機械化を実現させたいとの構想も示した。

 また、95年から国連機関の支援を得ながら始まった二毛作によって、稲とトウモロコシの作付けシーズン以外の間に、小麦と大麦の生産が可能になった。

 食糧問題の解決に寄与しているのが、ジャガイモの栽培だ。朝鮮では米とともにジャガイモを主食にしようと、耕地拡大、多収穫のための品種改良、有機質肥料の増産、二毛作を進め、増産をはかった。

 新しく整理した田畑で農業を行うためには、地力を高めなければならないが、95年から複合微生物肥料の本格的な導入に取り組んだ。この5年間に年間1200万トンの微生物肥料を生産できる能力を備え、80万ヘクタールの農耕地に施肥した(科学院愛国複合微生物センターのリャン・ホンゴン副所長)。

長期ビジョン

 食糧事情は少しずつ良い方向に向かってはいるが、まだ自給ラインまでには回復していない。とくに今年は「過去50年間にない旱ばつと異常高温」(朝鮮中央通信)により、秋の収穫にも悪影響が及び、穀物損失量は計140万トンに達するという。

 農業の本格的な復興を遂げるには、長期的なビジョンと対策が必要なのはいうまでもない。

 朝鮮水害対策委員会は、今年の1月から世界食糧計画(WFP)とともに本格的な農業復旧計画に着手している。2年間かけて行われる計画の内容は@自然災害で減少した食糧生産の回復A自然災害の予防B失業都市労働者の雇用機会の拡大――だ。32万人の労働者を投入して灌漑施設や堤防の復旧などを行うこの計画は、農業再建のカギを握る事業として注視されている。(張慧純記者)

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