第21回神奈川朝・日交流会/日校生が初参加
共に学び合う大切さ知る
「コリアンの輪 もっと広げよう」
民族教育の素晴らしさを伝えようと、神奈川朝鮮初中高級学校(横浜市)の生徒らが毎年主催している、県下の日本高校生らとの朝・日交流会が、今年で21回目を迎えた。11日、同校で行われた交流会には、高級部生徒160人、日本の高校40余校から約200人、日本の中学・高校に通い、神奈川日校学生会に所属している生徒ら約20人が初参加した。恒例行事のサマースクールを中心に、単独的に活動してきた日校生たちは、学ぶ環境は違っても同じ「チョソンサラム」(朝鮮人)という認識にたって、共に民族について熱く語り合っていた。 「青春ドラマ」 交流会の1部で、朝高生と日校生の「共同作業」による演劇「バンテージ」が行われた。 日本の高校に通いながらも自分が在日コリアンであることを公言し、ボクシングの高校チャンピオンに輝いた青年と、出自を隠し、「日本人」として部のマネージャーを務めるコリアンの青年――2人の対照的な生き方をユニーク、かつ感動的に描いた「青春ドラマ」には朝高生、日校生が4人ずつ出演した。 生徒らはそれぞれの演技を通して、「コリアンとして堂々と生きよう」「本名宣言しよう」と訴えた。同じ志向性を持ち、互いの心は1つになった。会場にいた朝高生と日本の生徒らの心をも大きく揺さぶった。 「従軍慰安婦」問題など朝鮮問題に関心を持っている高木久美子さん(川崎南高校3年)は、「異国で自分の民族をアピールするのは大変なこと。でもコリアンの人たちは逆境に負けず前向きに生きようとする。そのパワフルな姿勢を見て涙が出るほど感動した」と感想を語った。 「あっ!キムキムだ!」。2部の文化公演の場となったグラウンドでは、日校生の金敏植くん(鶴見工業高等学校3年)を日本の女子高生らが囲んでいた。演劇で主人公の高校生チャンピオン、「木村」こと「キムキム」を演じた彼は一躍、「人気スター」に。 「朝高生、日校生、日本の生徒らが集うこの場を出発点にし、よりたくさんの日校生を探そう」という意気込みで交流会に参加した金くん。「学校にコリアン学生いる?」、「うん、いるいる、本人から聞いた」といった会話を日本の生徒らと楽しげに交わしていた。 金くんは今まで朝高生に対していい印象を持っていなかった。日本の姓で学校に通っているため、朝高に通う親戚から批判的に見られているのではないかと、心配していたからだ。 「でも、朝高生らとの演劇を通して、壁なんてないと思うようになった」(金くん) また、同じく演劇に出演した日校生の辛麻美さん(鶴見女子高等学校3年)は、「今まで朝高生たちと交流ができなかったことを寂しく感じていた。でも参加してみて、1つの枠にこだわらず、コリアンの輪をもっと広げていきたいという思いを持つようになった」と語る。 県下には川崎南高校など「朝鮮文化研究部」といった朝鮮問題専門のサークルを設けている学校も少なくない。このような環境のもとで、日本名で通っていても周囲がたずねればコリアンであることを正直に打ち明けるという日校生も以前に比べて多い。 しかし一方では、日本の学校に通う生徒の8割以上が通名を名乗り、無理解や偏見にさらされながら生活している現実がある。だから「コリアン探し」も決して容易ではない。当人や、家族の意向で「日本人」として生きるという「ガード」を崩さない生徒もいるし、学校側が在校する同胞生徒の存在を教えることもない。 「今は『自己申告』を待つしかない」と、朝青神奈川県本部の車熙徳委員長(31)は語る。 そのためには、環境整備が必要だ。 朝青では今後、朝高生と日校生が共に胸をはってコリアンとして生きていくことを対外的にアピールしていくという。それを通して、コリアン社会に飛び込むことを躊躇(ちゅうちょ)する日校生に勇気を与え、日本学校の理解と協力を得られるよう、地域内での相互交流を積極的に育んでいくつもりだ。(李賢順記者) |