大分県日田市が初の試み
プルナ民族芸術公演「萬波」
朝鮮の文化芸能に触れ/地元高校で交流も
朝鮮半島の文化芸能に子供たちが実際に触れることで、朝鮮民族との共存、在日朝鮮人との共生を図っていくきっかけにしようと、大分県日田市教育委員会などが初めて企画したプルナ(芸能という意味の古代朝鮮語)民族芸術公演「萬波」が13〜17日の5日間、市内6つの日本の小中学校と市民会館で計7回行われ、児童・生徒、市民ら約6000人が観覧した。 公演では、金剛山歌劇団などで活躍し現在、全国各地でソロとして活躍する六人の在日朝鮮人芸術家が今回のために初めて共演。人間の苦悩や歓喜をダイナミックに表現した五面太鼓の演奏やプチェチュム(扇舞)、サムルノリ、それにカヤグムやチョッテ(横笛)などの民族楽器による「アリラン」や日本の歌謡曲「花」などを披露した。 市立大明中学での公演(15日)を観覧した梅原恵子さん(3年)は、「音楽は国交を越えたもの。実際に見て聞くことで、朝鮮を身近に感じるようになった気がする。日本と朝鮮は国交がまだないが、朝鮮の文化を知り相手を理解することによって、コリアンの人とも共に生きていけると思う」と語っていた。 またこの公演には、静修小学校3年の生徒たちが出演者と共に「アリラン」を朝鮮語で合唱。「歌(言葉)は2日間ですんなりと覚えられた。朝鮮をもっと知りたい」(石井拓也くん)と、子供たちは異文化に対し強い興味を示していた。 市教育委の末武泰彦室長は、「早くから異文化に触れることは、コリアンなどに対する偏見をなくす道に通じると思う。こうした積み重ねが重要であり、21世紀を担う今の子供たちの時代には、解消しなければ」と強調していた。 ◇ ◇ プルナ民族芸術公演の期間中、在日朝鮮人の出演者たち6人が県立三隈高校と日田高校の2年生の授業に招かれ交流した。 14日、三隈高校に招かれた出演者たちは、同校が4年前から実施している総合学科の「朝鮮語」の授業に参加した。選択授業のため生徒は6人で、うち1人が在日同胞生徒。 出演者たちは朝・日それぞれの名曲、「アリラン」と「トラジ」、「ふるさと」と「花」を伽揶琴やチョッテ(横笛)などの民族楽器で披露する一方、楽器の歴史などについて語った。 この授業を受け持つ朴龍哲さん(33、特別非常勤講師)は、「日本の子も在日の子も、講義よりも肌で感じられる文化芸能のほうが受け入れやすいようだ。在日の子は自国の文化を誇りに思っている」と言う。 「朝鮮語」授業が課目に取り入れられる前は、在日であることが明らかになると、友達が遠のくケースがしばしばあったという。 だから「日本の生徒が在日朝鮮人に対する理解を深める上で大きな意義があった」(朴さん)。 日田高校(15日)ではホームルームの時間に招かれ、朝鮮と在日に関する質疑応答などが行われた。生徒たちの質問は「なぜ、朝鮮人が日本にいるのか」などという、初歩的な認識に欠けるものが多数を占めた。 川野晃樹君は、「実際に話を交わしてみて、遠い存在だった在日朝鮮人を身近な存在として感じるようになった」と言う。河崎豊次教諭(43)は「心に残る場を与えることで、生徒たちは在日朝鮮人の問題を自分の問題としてとらえてくれたと思うし、それがなぜ在日なのか、その答えを探していく作業へとつながっていく」と語る。 同市では市のバックアップ、日本人教師の協力のもと、同胞講師が日本の小中学校に在学する「朝鮮・韓国籍」や、帰化者などの同胞生徒を対象に、4年前から夏期・冬季学校を開講し、ウリマルや歌を教えている。 日本学校に通う在日の生徒が朝鮮民族の一員であることを自覚できる場は、小学校では民族学級、中学、高校では民族サークルがある。その数は年々増えており、いずれも行政、学校側の理解、協力があってのことだ。 日校在学同胞生徒の発掘、そして今回のような公演授業などを通じた日本人生徒と、在日との共生意識向上をめざす日田市での取り組みの今後に期待したい。(羅基哲記者) |