グローバル新風

シルクロードの攻防


 カスピ海の底には、全世界の二割に相当する石油が埋まっていると言われる。今、これを巡り、ロシアと米国を軸にしたパワーゲームが展開されている。

 きっかけはソ連の崩壊だ。

  旧ソ連の一部だったこの地域(カフカス・中央アジア)では連邦の崩壊後、カザフスタンやアゼルバイジャンなどの独立国が次々に生まれた。その結果、カスピ海資源の権益は、自動的にこれら周辺の国々に渡ったのだが、ロシアの影響力が弱まると見るや、米国が触手を伸ばす。

 米国はこの間、数十億ドル規模の経済支援や大物閣僚の派遣で、この地域の国々との関係を強化している。また、石油採掘事業や大型の石油精製プラント建設にも取り組んでおり、この地域で主導権を着実に握りつつある。

 最近では、石油を輸送するパイプラインに関しても、既存のロシア領を通るルートのほかに、トルコなどを通過するルートを新たに敷設しようと計画している。

 ロシアはプーチン大統領の就任後、この地域への外交を積極的に展開しており、パイプラインの問題も含め、巻き返しに懸命だ。

 米国との力の均衡を急ぐプーチン外交の当面の狙いは、中央アジア・中国・朝鮮半島・日本などとの経済協力を強めて、石油だけでなく天然ガスや鉄道輸送なども含めた、ロシア経由の東西ユーラシアルートを強化する事だ。今夏に朝鮮を訪れたのは、こうした外交戦略の一環としての側面もあるものと思われる。

 その昔、東西交易の要所であった中央アジア。21世紀を目前に、この「シルクロード」を巡る駆け引きが熱い。(李達英=朝・日輸出入商社)

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