春・夏・秋・冬 |
先日、JRの駅と連結された地下通路で、20代後半の身体障害者の男性が突然、転倒する光景に出くわした。側にいた女性がとっさに手を差し延べて抱き起こし、大事には至らなかった。その場所は緩やかなスロープで、低い階段が続いていた。そのどこかに、つまづいたようだった
▼身体障害者たちも、障害のない人間と同様、自由に行動できる街作りを、と日本の各地でバリアフリー化に力が注がれ始めたのは最近のことだが、まだまだ不十分のようだ ▼JR関係者の話によると、駅のホームから転落する人の大部分が身体障害者であるという。そういえば、身体障害者の2人に1人がそうした経験の持ち主だという話を耳にしたことがある。最近、開通した地下鉄には車両とホームの間に柵が設けられている所がある。人命に関わるだけに、こうした対策が1日も早く講じられるべきだ ▼もっと深刻な問題として、電車の遅延や運休の情報が彼らに適切に伝えられないということがある。駅では普通、アナウンスや張り紙によって乗客にその事実を知らせるが、耳の聞こえない人、目の見えない人にはわからない。障害のない人間を前提にした社会作りの落とし穴である ▼身体に障害を持つ人も持たない人も、人として等しく同じ権利を有するという近代市民社会成り立ちの理念が、いかに空虚なものであるのかを教えられる ▼在日社会は、身体障害者を持つ親たちのネットワーク「ムジゲ」などの活動によって、近年ようやく目が開かれることになった。彼らと共に作る在日社会、大きな課題だ。(彦) |