朝鮮焼肉店経営集中講座
東京で第2回講座

独自性生かし攻めの経営を

「家庭の味守る」「若者のニーズ取り入れ」


 大阪での第1回講座(10月17、18日)に引き続き、「2000年度朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座」(主催=在日本朝鮮人商工連合会・同胞飲食業者協議会)の第2回講座が14、15の両日、東京・上野の朝鮮商工会館で催され、各地から70余人の同胞経営者が参加した。四日間を通じて参加者らは、学んだ経営ノウハウを積極的に自店に取り入れ、淘汰(とうた)が進む外食業界の荒波を乗り切っていく決意を新たにしていた。

逆境を乗り切る

 講座では、FSプランニング代表で経営コンサルタントの押野見喜八郎氏(14日)、恵クリニック院長の韓啓司氏(15日)の講演の後、都内の繁盛店見学と意見交換が行われた。

 目玉は、同胞経営者によるパネルディスカッション(写真)。「逆境を切り開く朝鮮料理店経営とは」と題し、群馬「朝鮮飯店」の権一氏、東京「焼肉名菜福寿」の尹栄子氏、埼玉「カヤの家」の金海理氏、兵庫「焼肉冷麺味楽園」の康虎哲氏が繁盛の秘訣について語った。

 尹氏は、千葉の名産、落花生をまぶした「ピーナッツカルビ」(780円)、にんにくのスパイスを効かせた「ニンニクカルビ」(580円)など、「地域の特産品を生かした新メニューや、季節物フェアで『一見さん』をとらえ、常連客にするよう心掛けています」。セット物を充実させ、6〜9品で850円からと、リーズナブルさを強調するなど、値段で満足感をイメージさせようというものだ。

 100%手打ち麺による冷麺が売りで、康氏自らが修行で鍛えた麺打ちを披露する「味楽園」では、「繁盛店の攻勢に流されず、お客さんのために頑張る姿を見てもらうことが、店の安心感につながる」(康氏)。このほか、「朝鮮風の内装でアレンジ」(権氏)するなど、雰囲気作りに力を入れているとの意見も目立った。

 話は激安店の価格攻勢にも及んだ。「だからといって、つられて値を下げてはだめ。安売り勝負ではなく、独自性を打ち出そう」との声が圧倒的だった。

業界支える気構え

 ディスカッションでは、同胞の店舗経営に求められるものについて、「結局は朝鮮の家庭の味で勝負するほかない」(金氏)ことでは意見の一致を見ながらも、若者の食へのし好の変化に合わせながら、味や価格、サービスだけでなく「店のイメージ作りも含めたトータルコーディネート」が必要との意見でまとまった。

 「守りから攻めへ」。来たる新世紀に向けて、魅力ある焼肉店を作り出すには、客のニーズをとらえた積極的なアピール攻勢が必要である。参加者の中でも、とくに若き経営者には収穫は大きかったようだ。

 新潟「焼肉レストラン大竜苑」の李明成さん(29)は、「現場で活用できる実践的な内容で、ためになった。同胞の食文化を守る気構えも学べた」と語り、今後はアイデアを駆使した顧客サービスの充実に力を入れたいと述べていた。

 また、大阪「南大門」の趙悠徹さん(30)は、同胞同業者との出会いを強調。「意見交換はとても刺激になった。さあ、うちも頑張ろうという気になった」。メニュー開発をはじめ、今後も勉強を続け、「自分たち若い世代が、同胞焼肉業界の未来を支えていくという心構えを忘れずにいたい」と語っていた。(柳成根記者)

メニュー開発で工夫を

 押野見喜八郎氏の講演「お客をファンにするメニュー開発の方法」の内容を紹介する。

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 現代の外食産業のテーマは、女性のニーズをいかにとらえるか。客層に占める女性客の割合が、店の人気を計るバロメーターと言われる時代だ。メニュー開発のポイントとして「SUTEKI(ステキ)戦略」を覚えておいてほしい。

 「S」はセンシブル(感性)。女性の低カロリー・健康志向に訴えてほしい。焼肉店ならブームの唐辛子ダイエットで訴求できる。素材数を増やして野菜も摂ることで、栄養バランスの良さもアピールできる。

 「U」はアップグレード(良質・上昇志向)。可能な限り、質を上げる努力をしてほしい。「T」はテイスティ(味)、「E」はエコノミカル(経済的実用性)、「K」はカインドネス(親切な商品提供)を指す。

 「I」はインテリジェント(情報性)、つまり流行や話題を取り入れるということだ。自分が食べた店で「新しい食体験」をすると、話のタネとして人に自慢できる。すると、そこから口コミで客が増えていく。

 女性客を含め、若者層への訴求は重要だ。外食である以上「おいしい」のは当たり前。そこに「遊食」、つまり食べる楽しさを加えることが大切になる。

 具体的には、外食産業の大きな流れである、和・洋・中を折衷した「創作」をすること。新しい味を生み出すのは限界がある。だが折衷なら組み合わせは無限。折衷志向は現代人のし好の変化を最も表すものであり、ぜひ取り入れてほしい。

 また、いろいろなものを少しずつつまむバラエティさや、本格・本物志向、民族料理へのこだわりなどが挙げられる。特に、朝鮮料理のように「民族」を追求する店は、厳しい業界を生き残ることができる。料理は民族の集積であり、味は民族に帰結するからだ。

 価格には絶対的価格と、相対的価格(コストパフォーマンス)がある。相対的価格とは、価格に見合う価値があるかということだ。

 他店と比較して価格が同じであれば、品質・量目ともに上回るメニュー。品質が勝るのであれば、量目はより多く、価格はより安く。量目が勝るなら、品質はより高く、価格はより安く。これが、最強の商品となる。ぜひ、最強の商品を生み出してほしい。

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