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第1回北南軍事実務会談

北南管理区域を画定


 北と南を連結する鉄道と道路の敷設作業と関連した第1回北南軍事実務会談が11月28日に板門店北側地域の統一閣で開かれた。報道を総合すると、今回の会談では、鉄道と道路の連結、復旧工事現場周辺の非武装地帯(DMZ)を「北南管理区域」に画定し、双方が工事計画書を交換した。これで、鉄道と道路を連結するうえで不可避な軍事実務問題が、解決に向けて大きな1歩を歩みだしたことになる。同時に今会談は、「国連軍」の帽子を被った南朝鮮駐屯米軍が、北南和解の障害になっていることを改めて浮き彫りにした。

会談が遅れた理由

 北南軍事実務会談は、9月に行われた北南国防相会談での合意によるもので、国防相会談では、双方が民間人の往来と交流、協力を保障するうえで提起される軍事的問題を解決するために積極的に協力することを確認。そして鉄道と道路の連結と関連した軍事実務会談を10月初めに開くことで合意していた。

 しかし、実務会談は予定通り開かれず、約2ヵ月遅れの開催となった。

 その最大の理由は、南側が工事現場周辺の管轄権を米軍から受け取れなかったからだと考えられる。鉄道と道路周辺の軍事境界線およびDMZを開放し、北南管轄区域を設定することは、先の国防相会談で合意されていた事項だ。

 軍事境界線から北と南にそれぞれ2キロメートルずつが現在、DMZに設定されており、北側は朝鮮人民軍が、南側は「国連軍」(南朝鮮駐屯米軍)がそれぞれ管轄している。したがって北側区域の管轄権にはなんの問題もないが、南側区域の管轄権を南側軍部が掌握するためには、米軍から管轄権を委譲されなければならない。

 しかし、10月14日に管轄権と関連して米軍が南側に示した内容は、「DMZ協商権限の南国防部委任」。つまり、南の国防部に北と交渉する権限だけを与えて、最終決定は米軍がするというもので、管轄権とはほど遠かった。

 もっと分かり易く言うと、米軍はマンションのオーナーで、南側はその管理人に過ぎないということになる。

 実際に南側は、板門店を通じて北と交流をはかる時、その都度、米軍に報告し、承認を得ていた。現代グループの鄭周永名誉会長が牛を連れて訪北するときも、事前に米軍に許可を要請し、当日には米軍将校が鄭周永一行と牛の点検にあたった。

 米軍が協商権限だけを南側に委譲して、管轄権を渡さなければ、北と南の鉄道と道路が連結されても、これまでと同じように米軍の承認を得なければならないというわけだ。これは統一問題を自主的に解決することをうたった6・15北南共同宣言の精神にも反する。

米軍との直接交渉

 こうした状況を打開するために朝鮮人民軍側は、米軍側と交渉を重ね、ついに11月17日、米軍から鉄道と道路周辺区域を北と南の管理区域とし、そこで提起される軍事問題を北と南の軍隊が協議して処理するという約束を取り付けた。

 これで、ようやく北南軍事実務委員会を開催する環境が整ったというわけだ。先ほどの例えで言うと、マンションの管理人から住人になった。

挑発的な軍事演習

 もう1つ、今回の軍事実務会談で重要なのは、北側団長の兪英哲大佐が、南側が米軍と行った共同軍事演習(「フォール・イーグル」10月25日〜11月3日)と南側の領空・領海侵犯行為を非難、警告したこと。軍事演習の目的は対北攻撃であり、領空・領海侵犯は、明確な軍事挑発行為だ。

 すでに朝鮮人民軍は、北南共同宣言の全面的支持を表明し、軍事的緊張を緩和するために努力を重ねてきた。

 しかし、もう一方の南側軍部は、時期尚早論を唱えながら、北を「主敵概念」からはずすのに難色を示している。

 こうした南側軍部の対北対決姿勢が改まらない限り、鉄道と道路が連結されても、それが北南の和解、協力につながらないと言う結果を招くこともありうる。

 もっとも重要な問題は、軍事実務的なことよりも、根本的なところにあるのだ。

 同時に、限定された区域であっても、北と南が共同でDMZの管轄にあたることは、統一問題の自主的解決=外勢(米軍)の排除につながる大きな1歩だと言えよう。 (元英哲記者)

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