在日同胞「慰安婦」訴訟

「血も涙もない判決」

東京高裁控訴棄却/謝罪、賠償しりぞける


国際法違反は認定

 日本の朝鮮植民地支配時に16歳で強制連行され、中国で「従軍慰安婦」生活を強いられた在日同胞の宋神道さん(78、宮城県在住=写真)が日本政府を相手に公式謝罪と損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は11月30日、請求を棄却した1審・東京地裁判決を支持し、控訴を棄却した。

 判決は1審と同様、宋さんの被害事実は認めたものの、日本政府による謝罪と補償についてはすべて棄却した。

 宋さんは、93年4月に東京地裁に提訴して以来、7年半におよぶ裁判闘争を行ってきたが、このたびの判決も、戦争犯罪に対する法的責任を回避する日本政府の立場を司法が追認する形となった。

 判決は、「従軍慰安婦」の労働が当時、日本が批准していた強制労働条約に違反すると判断、醜業条約(日本は加入)にも違反すると指摘。「日本政府に条約違反による国際法上の国家責任が成立すると解する余地はある」と述べ、戦後補償をめぐる裁判では初めて明確に国際法上の国家責任を認定した。しかし、「強制労働条約の解釈として個人の請求権を認めたものとは解されない」として宋さんの賠償請求権は退けた。

 民法上の責任については、「意思に反して日常的に長期にわたり強制的売春を強いられたことについて、日本政府は慰安所経営者とともに監督者として不法行為責任を負う余地があった」と、宋さんに損害賠償請求権の可能性を認めたものの、「日韓請求権協定」が発効した65年から20年たった段階で請求権が消滅したとの判断を示した。

 この判決について、弁護団の藍谷邦雄弁護士は「請求が認められなかったので判決は不当。宋さんを救済する措置は何も講じられなかった。評価するなら、国の国際法違反を認めた点」と指摘している。

 判決後、宋さんは法廷の外で待ちうけていた支援者や報道陣約100人の前に現われた。支援者に囲まれ、抱き寄せられるや、手で顔を覆って涙を流した。

 「頑張って!」などと声援が続くと、顔をあげ、「なんとかなるかと思って始めた裁判だったが、血も涙もない判決だった。裁判官は政治家と組んでいる。話にならない」と強い語調で語った。

 また、「在日の慰安婦裁判を支える会」は声明文を発表、「心の底から怒りを感じる。国家が全面的に責任を負うべき『慰安婦』問題がこのように放置されるのは、政府及び裁判所の怠慢以外の何物でもない」と非難しながら、謝罪と補償の早期実現を求めた。

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