Jリーグ サンフレッチェ広島に入団
広島朝高 李漢宰くん

夢は国家代表

「自分に打ち勝ち中心選手に」


 本紙既報のように、11月7日、広島朝鮮初中高級学校高級部サッカー部のMF李漢宰くん(高3)がプロサッカー・Jリーグ・サンフレッチェ広島へ入団することが決まった。朝高生がストレートでJリーグに入団するのは初めてのことだ。(張慧純記者)

学校あげてのアプローチ

 在日本朝鮮蹴球団に入り、朝鮮の国家代表になることが幼い頃からの夢だった。

 蹴球団非常設化の決定(今年1月)後、広島朝高は蹴球団をはじめとする同胞サッカー関係者の協力を受け、サンフレッチェに対し、李くんの入団を実現するための本格的なアプローチを開始。李くんは、5月に行われたサンフレッチェのユースチームとのテスト試合で、ゴール30メートル前のフリーキックを鮮やかに決めた。2回目のテスト試合でも得点。「広い視野、高いテクニックが評価」(トムソン・サンフレッチェ広島監督)され、入団が決まった。

 この数年、サンフレッチェは若手の有力選手獲得に積極的に乗り出しており、今年入団したルーキーの中には、「U―19」(19歳以下の国家代表)の代表が3人いる。すでに練習に合流しているが、「朝高の練習とは比較にならないほど、すきがない」。プロの厳しさを実感する毎日だ。

 トムソン監督は、「1年ほど経験を積み、踏むべき過程をクリアすれば1軍で活躍できる」と努力を促す。上野コーチも「スルーパスは若手1番」と評しながら、朝高のキャプテンとしてチームを引っ張ってきたタフさと精神力も生かして欲しいと期待を寄せた。

同胞のためのサッカーを

 朝高での3年間、レベルアップのため、日本の高校と年間百以上の対外試合をこなしてきた。「朝鮮人、朝鮮学校を強く意識した」過程だったという。監督には試合に出るたびに言葉やあいさつの問題、一般常識をとくとたたき込まれた。訪れた日本学校のトイレ掃除を忘れ、ひどくしかられたこともあった。「自分が何者か、何のためにサッカーをするのか。朝高はその出発点を教えてくれた」。

 5人兄弟の3男。蹴球団に籍を置きながら朝鮮の国家代表、Jリーグのガンバ大阪でも活躍した金鍾成選手に憧れてきた。川崎ヴェルディで活躍する梁圭史選手は同じ倉敷初中(現在の岡山初中)の先輩。広島朝高が、輩出した初めての朝鮮の国家代表だ。先輩たちと同じ土俵に立った今、さらなる上を目指す。

 「蹴球団でサッカーをやりたかったのは、同胞の喜ぶ顔を見たかったから。Jリーグでサッカーをすることになったが、ここで力をつけて国家代表になれば、同胞たちは喜んでくれるだろう。とにかく実力をつけ、チームの中心選手になりたい。自分に打ち勝つだけです」

 6月の北南共同宣言でさらに膨らんだ国家代表の夢。夢への大きな1歩を踏み出した。

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朝高生にハンディ/Jリーグの「特別枠」
「一条校」の壁取り除け

 Jリーグは外国人選手の契約に関して「外国人枠」(1チームにつき登録5人)と、外国籍であってもこの「外国人枠」に含まれない「特別枠」(1チーム1人)を設けている。李くんの採用はこの「特別枠」によるものだが、本来、朝高生には「特別枠」の資格がない。それは、「特別枠」の対象が、学校教育法が定める「1条校」出身者に限られているからだ。

 よって、現在、李くんは日本学校の卒業資格を取得するため、広島県立西高等学校の通信課程に通う負担を強いられている。

 Jリーグにおける選手の登録規定は、日本サッカー協会の規定に従ったものだ。同協会に「特別枠」の設置経緯について問い合わせたところ、「日本で生まれて、日本の学校で一緒に学んだにもかかわらず、国籍が違うというだけで入れないのはどうか。この点を考慮して作られた制度」(事務局)との説明だった。

 この説明によると、「特別枠」は外国人生徒が日本の学校に通ったケースを想定したもので、朝鮮学校生徒は検討の段階から、かやの外に置かれていたことになる。

 すでにインターハイや選手権大会などの各種全国大会では、「1条校」の壁が取り払われ、朝鮮学校の参加が認められている。すでに大阪朝高が出場を決めるなど、実力も実証済みだ。

 試合への参加は許す一方、プロを目指す段階で「1条校」の壁を設けるサッカー協会の対応には一貫性がない。日本のサッカー発展のために朝高の大会参加を認めたのなら、プロの世界でもその精神を貫き、壁を取り除くべきだ。

 今後もプロリーグを希望する朝高生は出てくるだろう。日本サッカー協会は、自己矛盾ともいえる「1条校」規定を1日も早く是正する義務を負っている。

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