春・夏・秋・冬 |
その昔、鴫(しぎ)と蛤(はまぐり)が、争いに夢中になっていた。それを見ていた漁師が、両方ともとってしまった。中国の戦国時代の策略を集めた「戦国策燕策」に出てくる「漁夫の利」である。それと同じことがまた、起きようとしている
▼「わが軍の主敵は北朝鮮」――。南朝鮮「国防部」が、4日に公表した「2000年度国防白書」には、こう記されている。歴史的な6・15北南共同宣言が発表されたにもかかわらず、相変わらず北を「敵」と見なしていることに、憤りを覚えるのは、筆者だけではないだろう ▼南朝鮮が、「国防白書」で北を「主敵」と規定したのは、金日成主席が逝去した翌年、95年度からだ。当時、金泳三は、北を故障した飛行機に例え、「いつ墜落(崩壊)してもおかしくない」と、うそぶいていた。以来、六年連続で「北主敵論」がまかり通っているのだが、どう考えても敵を間違えているとしか言いようがない ▼南朝鮮軍の統帥権は、米国が握っている。それは分かっている。でも、南朝鮮での軍の最高統帥者は、ほかならぬ共同宣言に署名した金大中大統領なのだ。とくに、金大統領は、常日頃から統一よりも安保問題を優先すべきだと主張している ▼考えられるのは2つ。1つは、金大統領が「北主敵論」者なのか、もう1つは、軍が大統領の意向に反しているのか ▼よもや、金大統領が「北主敵論」者とは考えられないが、かといって後者の場合、指導力に疑問が生じることになり、これまた理解に苦しむが、明確なのは、敵は別にいるということだ。(元) |