20世紀へ読みつぎたい本
民族的な共感を呼び起こした作品群
叙事詩「白頭山」、歴史小説「林巨正」、「土地」など
1900年代、朝鮮で朝鮮の人々によって書かれた本の中で、最も親しまれた本は? どんな本が人々の心を動かし、人から人へと読み継がれてきたのか? 和解へと向かう北南朝鮮の共通的な「文学遺産」を検討する段階に入ろうとしているこの時期に、100年というファインダーを通して21世紀にも読みついでいく書物とは何かを探ってみた。
評価高いの作家―李箕永 20世紀という時代、そこに生きる人々の生と時代背景を精細に語った書物こそ名作に値するものではないだろうか。 朝鮮の人々はこの世紀、どんな種類の本を読んできたのか。 文学にしぼって見ると、まず挙げなければならないのは趙基天(1913〜51年)の叙事詩「白頭山」(47年)ではないだろうか。以前、本欄の「文学散策」でも紹介した趙基天の同作品におけるプロローグは現在形でうたわれ、エピローグは祖国の未来像を重ねた未来形でうたわれており、七章からなる本文では普天堡(ポチョンボ)戦闘(37年6月)を中心とした抗日パルチザンのたたかいを過去型で綴っている。 内容・形式ともすぐれた、実質的には朝鮮最初の叙事詩ともいえる同作品は、今でも北の人民の心を離すことなく読みつがれている。 南では90年代のはじめに叙事詩「白頭山」が出版され、彼の原作になる歌謡「口笛」のレコードやCDなども最近販売されている。 解放後、土地改革など朝鮮の新しい農民像を描いた長編小説「土地」(1部48年、2部60年)の作者・李箕永(1895〜1984年)に対する評価は、北南ともに高い。 共和国の文芸コンクールで1等に輝いた「土地」とともに不朽の名作と評されている「豆満江」(3部作、54〜64年)は、19世紀末葉の反日義兵闘争から今世紀30年代初期の抗日武装闘争にいたる農民のたたかう姿を描いたものとして、ノーベル文学賞候補にもなった。 南のプルピッ社から出版された「李箕永選集」(全13巻、92年)の序文では「20世紀における朝鮮最大・最高の作家」と評している。 近年、歴史小説に対する関心は北南ともに高く、北では朝鮮文学史に金字塔をうち立てた作家・洪命熹(1888〜1968年)の大河小説「林巨正」(39年)と、彼の孫で現在、歴史小説家として名を馳せている洪錫中氏の「北東の風」(上・下、83〜90年)が好評を得ている。 南の月刊雑誌「マル」(99年12月号)は20世紀の知性史を整理する際、6人の出版社社主に最も心に残った良書20冊を選んでもらったが、6人とも共通して「林巨正」を挙げた。豊富な表現を駆使しながら1つの時代に対して批判的視覚を提示したことなどが選んだ理由だと言う。 社主の中で、韓竜雲(詩人、1879〜1944年)の詩「ニムの沈黙」(25年)や「仏教維新論」(13年)を挙げたのは4人。そして、冷戦・分断体制下に出た「白凡逸志」(48年刊行、金九・独立運動家 1876〜1949年)や、「転換時代の論理」(74年刊行、李泳禧漢陽大学校名誉教授)も継続して読むに値する書物であると評している。 また、日帝と米軍政時代の南朝鮮における社会変動を内側から照射した書物として「土地」(朴景利著、全16巻)、「太白山脈」(趙廷来著、全10巻)を挙げた。 ちなみに北では最近、韓竜雲、李光洙(作家、1892〜?)、申采浩(歴史学者、1880〜1936年)らをはじめとした近現代の文学者らの作品(「現代朝鮮文学選集」に所収)だけでなく、南の作家・黄晢暎氏の大河歴史小説「張吉山」(全10巻)も出版中である。 統一志向と民族原型の視点 南の季刊雑誌「実践文学」(2000年夏号)は「南北がともに読むウリ文学」という題で特集を組んだ。洪命憙と廉想渉(作家、1897〜1963年)、申采浩と姜敬愛(1906〜44年)、鄭之溶(詩人、1903〜50年)と白石(詩人、1912〜?)の作品を検証しながら、統一志向的な視点で文学界の交流と「文学遺産」の拡充を提示している。 その中で、文芸評論家のホン・ヨンフィ氏は「統一時代へと向かう文学的途上には、分断克服と民族的な共感の形成のために創作されるこんにちの作品だけでなく、私たち民族の固有な原形要素と情感の世界を形象化した作品に対する積極的な発掘と評価が重要である」と指摘した。(金英哲記者) |