日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷
北南共同起訴状 (抄訳−上)
8日から12日まで、東京で開かれた日本軍性奴隷制を裁く「女性国際戦犯法廷」に北南共同検事団が提出した起訴状のうち、第3章「日本政府の国家責任」の抄訳を紹介する。起訴状は@(犯罪が行われた)背景(4条52項)A起訴事実(2条98項)B日本政府の国家責任(14項)からなる。なお、法廷に提出された起訴状の原文は英語だが、本稿では朝鮮語の起訴状を訳した。
1、旧日本国の最高統帥権者だった天皇裕仁と政府首相、陸軍相、海軍相、軍需相、内務相、厚生相をはじめとする政府と軍部の多くの高位官吏と将校は、軍で行われた性奴隷行為に対して、それを黙認したばかりでなく、制度的に保障し、その実行のために様々な命令と指令を下した。 3、当時、日本政府は軍「慰安婦」行為を直接主導し、これに内務省、外務省、朝鮮総督府をはじめとする国家機関が関与し、多くの国家官吏と軍将校がそれを執行した。また、軍の指令のもとに、一部の民間業者が「慰安婦」連行、「慰安所」の管理に引き入れられた。 4、こうした代表的な事例は、次の通りである。 @陸軍省兵務局兵務課が、1938年3月4日付けで北地方面軍および中地方面軍参謀長らに送った陸軍省副官通牒、「軍慰安所従業婦等募集に関する件」は、当時、陸軍省次官だった梅津美智郎が決済している。 A〜Dは略 6、ハーグ条約の付則第43条では、軍事占領軍が占領地域の現行法を尊重し、公共秩序と住民生活を安定させるために、可能なあらゆる手段を尽くすように規定しており、第46条では、占領地住民の家庭の名誉と権利、個人の生命を尊重するよう規定している。 1946年、インドネシアのバタビア臨時軍事法廷では、第2次世界大戦期間に少女や処女をら致して売春を強要し、強姦(ごうかん)を助長敢行した日本軍人の行為が戦争法規違反だとの判決が出され、有罪が宣告された。 7、「醜業を行わしむる為の婦女売買取締に関する国際条約」と「婦女および児童売買禁止に関する国際条約」の第1、第2条では、女性に対する性的強奪、売春勧誘、連行を厳格に禁止し、そうした行為を行った者は、本人の同意いかんにかかわらず処罰されると規定されている。「極東国際軍事裁判所条例」第5条3項には、戦争前もしくは戦争中に行った殺人、殲滅(せんめつ)、奴隷的虐待、追放、その他非人道的行為、もしくは該当する国の国内法に対する違反の有無に関係なく講じられる政治的または人種的理由による迫害行為は、人道に対する罪になると規定されている。 上記の国際法規などに照らしてみると、日本軍性奴隷制は、人道に対する罪となる。 人権侵害に対する真相究明と公開は、人権保障原則の1つである。 しかし、日本政府は、戦後半世紀の間、終始一貫して軍性奴隷制に対して黙認し、軍の所行であることを否定した。 歴代日本政府の高位官吏の発言は、@軍「慰安婦」行為に対する政府や軍の介入を否定し、A「慰安婦」に対する強制連行はなく、B軍「慰安婦」は職業売春婦で、彼女らの行為は商行為であり、C戦争時に強姦、または売春行為が行われるのはありうることだ、というものだ。 日本政府の事実を否定する態度と責任回避の立場に憤慨した人々と民間団体は、関係文書発掘、分析、現地調査を行い、軍「慰安婦」行為が日本軍の直接的な所行であるという事実資料を相次いで公表した。また沈黙を守っていた多くの被害女性が、公開の場で証言し、旧日本軍が行った性暴行について暴露した。 日本政府は、仕方なしに真相調査を行って調査結果を発表したが、「慰安婦」の連行と「慰安所」の管理運営に軍が介入したという程度にとどまり、「慰安部」総数と国別人数、「慰安所」設置地域と「慰安所」の名前、その管理者、「慰安婦」の処理など、真相の全貌は明らかにしていない。 日本政府は、軍性奴隷制と関連した文書などをすべて公開し、生存している犯罪者を掌握して公開の場で証言させ、当時の「慰安所」関連文書をはじめとする証拠資料に対する調査発掘事業を積極的に行い、日本軍性奴隷制の全貌を明らかにしなければならない。 9、日本政府は、軍性奴隷制に対する国家的、法的責任を認めて謝罪しなければならない。 軍性奴隷制に対する日本政府の否定的態度に国際的な圧力が加えられるや日本政府は、事実を認定し、道徳的責任は認めたが、いまだに国家的、法的責任を否定している。 日本政府は当時、強姦、拷問、殺人といった暴行を犯罪として規定した国際法規がなく、とくにかつて朝鮮と日本は「合邦」関係だったので、朝鮮女性を「慰安婦」として連行したのは犯罪に当たらない、とする不当な論理まで振りかざしている。 朝鮮と日本が「合邦」関係にあったとする彼らの主張は、歴史的事実に対する完全なわい曲である。 朝鮮は、過去41年間も日帝の軍事的強占下にあった軍事占領地域であった。したがって、日本が朝鮮女性に対して実施した軍性奴隷制は当然、戦争犯罪であり、人道に対する罪となる。 日本政府は、虚言ではなく軍「慰安婦」被害者に与えた精神的、肉体的被害に対する保障を添えて、公式に国家的な謝罪を行わなければならない。 こうした謝罪は、政府の個別的人物がなにかの機会に1言2言触れる発言ではなく、国会決議や政府声明のような書面形式で表されなければならない。 |