在日朝鮮人の20世紀G

民族文化運動の軌跡


文学芸術家同盟、歌劇団の結成

 民族の抹殺に狂奔した、36年間にわたる日本の植民地支配。異国、日本に強制連行されてきた同胞も例外ではなかった。

 解放後、そうした影響からか、日本にいた同胞作家、芸術家の中には民族精神を失い、事大主義と民族虚無に陥り、芸術至上主義を標ぼうする人々が少なくなかった。

 そのような状況を一新しようと、同胞文化人たちは日本での民族文化の開花発展をめざして、50年代半ばから大きな盛り上がりを見せた祖国への帰国要求運動と共に文芸活動を活発に繰り広げていった。その結果、それまで散在していた文化人たちを一堂に網羅した、在日本朝鮮文学芸術家同盟(略称―文芸同)が59年6月7日に結成された。

 文学芸術活動の中で特筆すべきことは、74年4月、在日同胞芸術家が祖国で自らの技量を錬磨し、公演を行ったことである。その後、8月29日、従来の中央芸術団(55年6月6日結成)の呼称を改め、「金剛山歌劇団」を結成するに至る。

  以後、歌劇「金剛山の歌」(74年9月9日)、「オモニの願い」(83年6月27日)などの公演で大きな反響を呼んだ。55年からこれまで6500回を越える公演に延べ1400万人の内外観客を集めた。また、今年45周年を記念して、全国各地23ヵ所で計28回(観客数は延べ6万人)の公演を行なった。

ウリマルで同胞生活の生活感情を描く

 昨年、結成40周年を迎えた文芸同は、東京をはじめとする14の地方と金剛山歌劇団、朝鮮大学校に支部を設け、盟員、愛好家ら1000余人を網羅している。

 この間、様々な紆余曲折を経ながらも母国語・ウリマルによる創作を基本とし、祖国愛、民族愛を育む数多くの作品を収録した機関誌「文学芸術」(通巻109号)をはじめ、「キョレ文学」(文芸同中央文学部編集)、詩誌「チョンソリ」(チョンソリ詩人会編集)や「プシ(火種)」(大阪支部)、「ムッピョ(群星)」(京都支部)などの地方文芸誌を発行し、同胞愛好家たちから広く愛読されてきた。

 文芸同に網羅された同胞作家、詩人らの作品が平壌の文芸出版社や総聯傘下の出版物および日本でも紹介、出版されているだけでなく、文芸同初代委員長の許南麒氏(1918〜88年)の叙事詩「火繩銃のうた」、そして李殷直氏の小説「濁流」などは南朝鮮でも翻訳出版された。

 そして今、2、3世の作家たちは「テーマを在日の生活哲学に求めなければならない」(李尚民・文芸同盟員)と、同胞から共感を得る作品の発表に大きな努力を傾けている。

音楽・舞踊の大衆化、すそ野の拡大

 音楽・舞踊分野では、同胞の情緒と生活環境にあった大衆歌謡の創作と発表、それを通じた同胞たちへの民族心の浸透に力を傾けてきた。歌劇団、地方歌舞団の公演などがその絶好の場となってきた。

 とくに文芸同結成30周年に際して出版された「大衆歌謡曲集」は、過去の創作成果を集大成したものとして、同胞たちの間から大きな評価を受けた。

 一方、「2月の芸術の夕べ」などの公演を定期的に行い、朝・日親善をはかるうえで大きく寄与している。

 民族舞踊は、朝鮮のリズムを誘い、民族の誇りと自負心を高める重要な分野である。

 かつて1部の専門舞踊家によってのみ形象化されてきた舞台はこんにち、文芸同舞踊部、金剛山歌劇団、地方歌舞団、民族教育を受けて育った新しい世代、大衆芸術サークルのメンバーらによって彩られるようになった。またここ数年、祖国の講師を日本に招請し、民族の歌、舞踊などを学ぶ講習会を各地で開くなど、同胞サークル活動の活性化を図っている。

 今年10月、在日と南の舞踊家たちによる解放55周年記念コリアン民族特別公演「チュムノリ舞55」が行われた。また、朝鮮舞踊の歴史を綴る舞踊組曲「歳月」が24日の大阪を皮切りに、来年3月まで愛知、東京で上演される。

民族をテーマにした創作活動

 同胞美術家たちの作品も半世紀の間、朝鮮画、油絵、水彩画などの各ジャンルで様々な変化をとげてきた。中でも近年、若い世代のざん新な創作活動が目につく。

 93年10月、分断以来、初めて北、南、海外同胞美術家による「コリア統一美術展」が東京と大阪で開かれた。そして、その6年後の十月、在日コリアン美術展―「アルン展」が京都で開かれた。「作品には、具象にしろ抽象にしろ多かれ少なかれ、失いかけていた民族のアイデンティティーの確立が底辺に流れていた」(朝大教員・李繻M氏)。

 演劇の分野でも、若い世代たちの活躍ぶりがめざましい。80年代、文芸同演劇部は光州人民蜂起などをとり上げた演劇を上演した。最近では、劇団アラン・サムセが民族をテーマにした「メイク・アップ」の地方公演を行い好評だった。

 映画の分野では、祖国と総聯の合作による「銀のかんざし」「オモニの願い」を制作・上映しただけでなく、昨年からはビデオマガジン「エルファ」を通して、同胞の生活などを生き生きと伝えている。(金英哲記者)

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