「地方参政権法案」は撤回すべき/
総聯中央が発表した声明文 


日本政府は朝・日国交推進と基本的人権保障を
南当局・民団は同胞の意に反する「獲得運動」中止を

 総聯中央が2日の記者会見で発表した「日本国会に提出された『地方参政権法案』の即時撤回を要求する」と題する声明は全文次のとおり(見出し、中見出しは編集部)。

政治的取引の具に

 1月21日、日本の一部政党は「永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員および長の選挙権の付与に関する法律案」を衆議院に提出した。

 私たちは、当事者である在日朝鮮人の再三再四の反対要請にもかかわらず、「法案」が提出されたことに深い憂慮の念を禁じえない。

 周知のように、私たちは内政不干渉の立場から、在日朝鮮同胞の民族的主体性を否定し、帰化・同化現象を促すだけでなく、同胞社会と地域社会に無用の混乱と対立を招く「地方参政権」の付与に一貫して反対してきた。

 こうした私たちの主張と要請に対する内外の理解が深まることによって、日本の多くの地方議会では「参政権」審議を取りやめ、一部の議会ではすでに決議した議案を白紙化した。

 にもかかわらず、今回、突如として「法案」が提出されたのは、「韓日新時代」の名のもとに現南朝鮮政権が政治的意図をもって日本側に強く働きかけ、民団の一部幹部が日本の政党になりふり構わず要請を行ったからである。

 これによって、もはや「参政権問題」は「人権論議」の次元ではなく、政治的取引の具と化してしまった。永住外国人の総意とはまったくかけ離れたところで、南朝鮮当局者の執ような要求に応える形で「法案」が提出されたこと自体、異常なことと言わざるをえない。

同胞社会を分断

 それにもまして今回の「参政権法案」は、これまでとは違う重大な問題点をはらんでいる。

 「法案」の「施行規則その他」には、「当分の間、この法律における永住外国人は、外国人登録原票の記載が国名によりされている者に限るものとする」と明記されている。これは、「朝鮮籍」所有者を対象外とし、「参政権」を望むならば「朝鮮籍」を捨てて「韓国籍」を取得せよというものだ。

 このことは、「韓日条約」締結後、「協定永住権」取得を優遇し、「朝鮮籍」所有者に対して巧妙に「韓国籍」を強要した事実をほうふつとさせる。

 結局、今回の「法案」は、「朝鮮籍」所有者と「韓国籍」所有者を政治的に選別するばかりか、同胞社会、ひいては家族の中でさえ分裂と対立を生じさせるものである。

 これまでも民団は、「参政権」は単に権利獲得にとどまらず「朝鮮総聯の崩壊」を目指したものであるとしてきたが、このたびの「法案」がこれに加勢するものであるならば、きわめて由々しいことである。

 南北朝鮮の間でかつてなく民間交流の輪が広がり、民族の和解と統一の熱意が高まりつつある今、それに逆らうように在日同胞社会に分断の火種をまくことは到底容認できない。

「朝鮮籍」符号扱い

 とりわけ、朝・日関係改善の兆しが見え始めているこの時期に、なぜ水を差すかのように慌ただしく「法案」が提出されたのか、理解しがたい。

 日本に今、最も求められているのは、過去の清算と朝・日関係の正常化である。

 在日朝鮮同胞がこんにち、民族差別の中でその人権を踏みにじられ、不安定な境遇を強いられているのは、決して「参政権」がないからではなく、日本当局の時代錯誤な対朝鮮政策と理不尽な在日朝鮮人政策にそもそも起因する。したがって、朝・日政府間交渉の中で、在日朝鮮人の法的地位をはじめかつての強制連行、強制労働などの諸問題が正しく解決されることが何よりの先決課題だ。

 朝・日政府間交渉が日程に上っている時期に、「朝鮮」を「符号」扱いする「法案」が提出されたことは、朝鮮民主主義人民共和国の自主権と在日同胞の尊厳を著しく傷つけるものである。

 以上の理由により、私たちは、次のように要求する。


 1、日本国会に提出された「地方参政権法案」は即時撤回されるべきである。

 1、日本当局は1日も早く朝・日関係正常化をはかり、在日朝鮮人の基本的人権と安定した生活環境を保障すべきである。

  1、南朝鮮当局と民団は民族と同胞の意に反する「参政権獲得運動」なるものをただちに取り止めるべきである。


 私たちは、日本の各政党と広範な日本国民の皆さんが、私たちの主張に深いご理解をお寄せ下さることを願っている。