取材ノート/被災地に時代の縮図


 1995年1月17日の阪神・淡路大震災では、被災地で多くのボランティア団体が生まれ、日本の「ボランティア元年」と言われた。震災から5年を経過した今も少なくない団体が動いているが、活動内容は震災関連が全体の4割弱に減ったとされる。今後は福祉や介護など、地域で新たな役割を担いたいとするものが大部分のようだ。

 阪神・淡路大震災の発生当時、記者1年生ながら現場を取材。その後も1年、1年半、2年…といった歳月の節目に、被災地に足を運んで来た。そこではしばしば、「組織」というもののむき出しの姿を見ることができた。

 政府や自治体の柔軟さを欠いた救援活動を補おうと、自発的で若い力がボランティアに向った。在日同胞は、被災者の会を作って助け合い、被災朝鮮学校の再建委員会を結成してコミュニティーの自力再生に取り組んだ。

 志向や利害を同じくする人々が、持てる力で目の前の問題を打開するための回路を作る――そんな「組織」の成り立ちの仕組みが、被災地の非日常的な環境下で浮き彫りになっていた。

 ただ、人々が関心を向ける問題は、時の流れとともに移り変わる。今のような変化が激しい時代には、組織もそれなりの対応を求められる。

 営利組織では、航空機エンジンなどで知られる米ゼネラル・エレクトリック社の例が有名だ。「大量生産=大量消費」から高効率追求に向う時代の流れをつかみ、自社製品の運用をサポートする高度技術サービスを主力事業に据え、高収益を上げている。

 規模や形は違えど、震災生まれのボランティアが、持てるエネルギーの注入先を求めて新たな役割を模索するのも、「時代と組織」のダイナミックな変遷のひとつの形と言えないだろうか。                                                             (金賢記者)