えこのナビ/なぜ続く?「焼酎」ブーム
低カロリー、飲みやすさ、女性層つかみ消費底上げ
飲み方に独自のこだわり
無添加アピールカクテル開発、「よそにはない」売りに
ビールとともに庶民に根強い人気を誇るのが焼酎である。他の酒類の消費量が減少傾向にあるのに対し、焼酎は横ばいながら好調を保っている。真露をはじめとする輸入焼酎は、日本国内の消費量の1割以上を占めるまでに成長した。業界では、低カロリーと口当たりの良さ、バリエーション豊かな飲み方を楽しめる点が女性を中心に広く受け入れられたことを挙げ、「焼酎文化が日本に根付いた証明」と分析する。
日本の焼酎消費量の推移 1985年度
2.541
365.358 |
増税も影響なし
日本での焼酎ブームの始まりは、輸入が本格的に始まった1980年代のこと。ウイスキーなどの洋酒に比べて安価なのが人気の要因だった。だが、洋酒を輸出する欧米諸国から酒税の安さを指摘された日本は、89年、94年、昨年と酒税法を改定。焼酎の価格は高く、ほかの酒類は安くなり、焼酎に逆風が吹いた。
ところが、昨今の不況のあおりで日本での酒税課税数量(=消費量)が全体的に伸び悩むなか、焼酎の数字は増税にもかかわらず落ちなかった。80年代のヒットを「第1次ブーム」とするなら、今の人気ぶりは「第2次ブーム」とも言える。
日本蒸留酒酒造組合の上沼亀男さんは、その理由を「一貫して追求してきた健康志向が女性人気を獲得したのと、輸入焼酎のヒット」の両面から分析する。
「健康ブームで、ワインの効能など酒類全体の良さが見直された。果汁ブレンドによる口当たりの向上と気軽に飲めるスタイルを目指したチューハイが女性に受け入れられ、居酒屋などで一般に飲まれるようになったのも一因です」
輸入の面でいうと、ほとんどは真露など南朝鮮産。南朝鮮から日本への輸出量は、98年で前年比10%増の4000万リットルにも上る。ブームの火付け役である真露は、1昨年に売り上げが200億円を突破、都内の600の酒販店での取扱率は「純」や「トライアングル」を抜いてトップに立った。
「肉に一番合う」
そんななか、焼酎に独自のこだわりを見せる飲食店も出てきた。東京都渋谷区にある「焼肉レストランYOYOGIEN」もその1つ。焼肉というと「とりあえずビール」という人が少なくないが、店長の金鐘泰さんは「焼肉には焼酎が一番」と提唱する。
金さんがこだわるのは平壌焼酎。平壌郊外の天然水と、トウモロコシや小麦など穀物100%で長期熟成した、化学添加物ゼロの本格焼酎だ。輸入代理店の海陽薬業(東京都台東区)から仕入れた数ダースの大瓶と40数本のキープボトルが、常に出番を待っている。「一般にはまだ広く知られていない平壌焼酎を、少しでも普及させたい」との思いによるものだ。
焼酎を注文する客に勧めると、ほとんどの人が独特の辛みを気に入り、ほかの焼酎から移行するそうだ。
「『朝鮮民主主義人民共和国のお酒』というと、大抵の人は驚かれますね。でも一杯飲むと、次からは『平壌焼酎ください』と銘柄で頼んでくる。おみやげに焼酎だけ買う人も多いですよ。焼肉も食べていってほしいんですけど」と、金さんは苦笑する。
イメージと流通
焼酎の様々な味わい方を客に勧めているという金さんの一押しは、「独特のアルコール臭が消えて、味ががらっと変わる」という、スライスしたキュウリを焼酎に漬けこんだ「キュウリロック」と、金さん自ら考案した、平壌焼酎と南朝鮮の「チャンナム」(ナラの木)を1対1のベースで割った「焼酎カクテル」。平壌焼酎の辛みとチャンナムの甘みが程よくマッチし、口当たりの良さが格段に増す。はまることうけあいだ。
金さんは、昨今の焼酎ブームの背景にはCMなどで飲み方を積極的に提案するイメージ戦略が大きいと見る。
「真露はまさにこのパターン。コンビニに置くなど流通戦略もうまい。逆に平壌焼酎は一般にまだ知られていない分、『よそでは飲めない』のを売りにできる強みがあります」。ブームはまだまだ続きそうだ。
(柳成根記者)